二つの宝石 コハクさん『航海日誌』

「非番の時はやる事ないのよね…」

コハクは欠伸を噛み殺しながら呟く。

補給を終え、追い立てられるように(または逃げ出すように)サツキミドリ二号を後にしたナデシコは、現在航行中。

敵からの攻撃も挨拶程度で、本当にやる事が無い。

しかも現在は夜勤で、周りに誰もいない。

思い付きでブリッジの重力を切って、無重力下を遊泳していたりする。

それでもやっぱりヒマはヒマだ。

暇つぶしに他のパイロットがどうゆう生活をしているのか見てみる事にした。

「オモイカネ、重力戻して。 それからちょっとお願い
 今から六時間前のパイロット達の行動を見せて」



――数時間遡って…ヤマダの場合――

「…何やってるの、アレ?」

“アニメ、ゲキガンガーを外部出力より再生中です”

「…私は映画にしといた方が無難だよね?」

“…さあ?”

オモイカネに意見を求めるのはどうかと思うが…



――同時刻…アキトの場合――

「あ、厨房か〜」

“テンカワさんはコックを兼業されてます”

「流石に整備とサブオペレーターとパイロットやってたらコックはやる気になれないなぁ…」



――同時刻…イズミの場合――

「あ、パス」

“どうしてですか?”

「だって、やる事は目に見えてるもの」

“何をやっているのか知っているんですか?”

「大方、ダジャレの修行でしょ?」

“…アレがダジャレなんですか”

「ん〜、どうとも言えないけどね(苦笑)」



――同時刻…ヒカルの場合――

「マンガの原稿か…」

“なかなか手間のかかる作業ですね”

「確かに、デジタルでやっちゃえば早いんだろうけど、どうして使わないんだろうね?」

“さぁ?”

だから、オモイカネに聞くのはどうかと思うぞ?



――同時刻…リョーコの場合――

「あれ、ナデシコにこんな設備あったっけ?」

“トレーニングルーム横の道場のカメラです”

リョーコが剣道着姿で刀を携えて正座していた。

“プロフィールの特技に抜刀術があります”

「それよりもオモイカネ、艦内に刀なんてあったっけ?」

“私物のようです”

「…管理がずさんじゃない?」

“プロスペクター氏は容認していましたが、問題が?”

「…なら、いいんだけど」

“コハクさんも持ってるじゃないですか、拳銃”

「アレは形見だからいいの
 弾も六発しかないし」

“そうですか?”

「…そういう事にしておいて」

“わかりました”

「取り合えずこんなもんか…」

“終了します”

「ん、ありがと」

(さて、私はどうしようか…)

映画……取り合えず興味のありそうなのをピックアップしておく
料理……既に趣味として成立している
マンガ…書く気なし
運動……取り合えず勤務中は出来ない

「結局参考にならないや」

再び重力を切って、遊泳を始めるのに時間はかからなかった(笑)




通常勤務の時間帯。

しかし、戦艦の通常勤務は索敵と整備と戦闘準備と生活環境の維持以外にする事が無い。

だからやっぱりヒマである。

だからルリはゲームをしている。

ミナトはマニキュアを塗っているし、メグミは雑誌を読んでいるし、フクベ提督はお茶を飲んでいた。

ユリカは何時の間にかアキトを追いかけている。

そんな『あっちゃいけないだろ』『そんな楽な仕事があるか』等と言われてしまいそうな所に、珍しい面子が入ってきた。

ウリバタケ、リョーコ、ヒカル、イズミだ。

手に手にアサルトライフルを装備している。

まぁ、整備班の中でも少数(ウリバタケを含む)はスパナで武装しているが(笑)。

突然の状況に唖然としていると、ウリバタケが拡声器を使って言う。

「我々は〜〜、断固ネルガルに対抗する〜〜!!」

なんのこっちゃい(笑)

取り合えず、銃を突き付けられたので動くに動けなくなる。

まぁ、呆れ半分ではあるが…

「どうしたんですか!?」

ユリカがブリッジに到着。

「何事ですか?」

ユリカは反乱分子の主要人物ウリバタケにリョーコ、ヒカル、イズミらに声をかけた。

「どうしたもこうしたもない! この契約書を見てみろ!!」

「へ?」

ウリバタケに差し出された契約書…、それはクルーがナデシコに登場する時にサインさせられたものだった。

「え〜っと…」

「その一番最後の一番小さい文字を読んでみろ!」

ユリカはリョーコに言われるままに音読する。

「……男女間の交際は禁止いたしませんが、風紀維持の為に握手以外の男女の接触は禁止致します…
 なんですか、これ?」

「読んでの通りよ
 お手て繋いで〜…、って、ここはナデシコ幼稚園か!?」

ウリバタケがリョーコ、ヒカルの手を取って踊りながら言う。

リョーコ、ヒカルに肘を決められ、撃沈したのはご愛嬌(笑)

「ま、まぁ……(汗)」

「俺達ゃ、去勢されたペットじゃないんだ!<br>  そんなこと考えてまで恋愛なんか出来るか!!!!!」

何時の間にか復活したウリバタケが叫ぶ。

まぁ、気持ちもわからないでもない(爆)

「でもそれがエスカレートしていったらどうします?」

別の方からそう声をかけたのはプロスペクターであった。 <p>ちなみにオモイカネによってライトアップされていたりする。 いつの間にそんな事を仕込んだのやら…

「貴様!!!」

現況の到来にウリバタケが憎々しげに言う。

「恋愛が成就すれば結婚<br>  結婚すれば出産…<br>  子供を乗せて戦争するわけには行きません<br>  ココはナデシコ幼稚園ではありませんので、ハイ」

「うるせえ!!
 そんな去勢された生活するくらいなら、女房の尻の下にいる方がマシだ!!」

「でも契約書にサインされた以上・・・」

「黙れ! これが見えないか!!」

スパナをこれ見よがしに構えるウリバタケ。

『セイヤさん、やるなら隠れてやればいいじゃないですか
 それに、文句を言うなら銃なんていりませんよ。
 茶番に付き合う方の事も考えてください』

唐突にコハクがウィンドウを開いて言う。

「いや、隠れられても困りますなぁ…」

『大体、性行為を良しとしないのであれば、コンドームの自販機なんて置かなきゃいいじゃないですか?
 置いてるって事は、最低でも避妊さえすればいいって事でしょ?』

プロスが困ったようにメガネを直す。

「最低でも、ですよ。
 我々も無いに越した事はないのですから…」

『…AIDSがまだまだ蔓延していた頃、ニューヨークじゃ麻薬に使う注射針のせいでその感染者が増えていた…
 背に腹は変えられぬって事で、注射針を無料で配布していたらしいですよ?』

「…要するに、避妊を最低条件に交際の上限を引き上げろ、と?」

『恋愛事なんて興味ないけど、それにつきあわされるのはイヤ
 ここで契約改善しておけば文句ないでしょ? 双方共に』

顔を合わせるプロスとウリバタケ。

「俺はそれで構わないが?」

「上に掛け合ってみないと何とも言えないですなぁ…」

『と、言う事でこの議論はプロスさんの結果待ち
 さ、皆さん持ち場に戻った戻った』

釈然としないままに、だが流れに勝てず、ウリバタケ一行は撤退していく。

『プロスさんも、ちゃんと検討してくれないと困りますよ?
 また何時暴走するかわからないんですから』

「はぁ。 善処はしますが、結果は期待しないでいただきたいですなぁ…」

これにて一件落着…、なのか?

突然の警報がそんな和んだ空気を一気に緊張させる。

「敵影です。
 チューリップが三機、戦艦クラス五隻、巡洋艦クラス十隻、駆逐艦クラス十五隻、バッタが沢山…
 本格的な大部隊みたいです。 回避は無理みたい」

『そろそろ敵の勢力圏内だし、当然と言えば当然のお出迎えよね
 私は出れるわよ、艦長?』

「あ、はい。 先行して出撃しちゃってください」

『お先に。 リョーコさん達も早く来て下さいね』

「あ、待ちやがれ!!」

「抜け駆けだ〜〜」

「段々年をとる…、老いてく、置いてく… ククク」

緊張感のない何時もの調子が戻り、ブリッジは戦闘体制に移行する。

何時の間にかさっきの騒動など忘れている。

「グラビティ・ブラスト、スタンバイ!」

ナデシコの火星への挑戦が始まる…


――あとがき――

【幻魔狼】さて、前回呼ばなかった人がゲストです

【ユリカ】え〜、なんでオマケみたいな言い方するんですか〜?

【幻魔狼】だって、本編じゃぁチョイとばかし不遇な扱いを受ける予定なので…

【ユリカ】えぇ〜〜! 酷い!

【幻魔狼】酷いと言われ様となんだろうと、そう言う流れなんだから

【ユリカ】でもでも、ユリカとアキトが離れ離れなんてありえません!

【幻魔狼】そう言うシチュエーションこそモエル展開が待っているとオモウヨ

【ユリカ】そ、そうだよね! 再開したらあんな事やこんな事……

【幻魔狼】お〜い、ミスマル・ユリカさ〜ん?

【ユリカ】だめよアキト、そんなこと…

【幻魔狼】駄目だこりゃ…
     それじゃ、次回予告は自分で
     火星への突入を敢行し、戦闘を開始するナデシコ
     果たして火星降下は成功し、その後はどうするのか?
     次回、火星『突入』をお楽しみに

【ユリカ】アキトの馬鹿ァ…

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