二つの宝石 すばらしき『料理』

「よっと」

コハクは最後の装甲を固定し終え、エステバリスの整備が終了した。

借り物の少し大きめの整備班員用のつなぎで汗を拭うと、エステバリスを見上げる。

最初に乗った時のままの無塗装の装甲が照明を反射して眩しい。

「ホントに自分でやっちまったのか?」

声の元を振り向くと、ウリバタケがいた。

「ええ。 これから、もう暫らく命を預けるんですから…
 一回ぐらいは自分で整備状況を見とかないと気が済まなくって」

「おいおい、それじゃぁ俺達の働きを判定してたわけか?」

冗談と本気を半々くらいの割合で混ぜた返事が返って来た。

「ええ。 整備士が皆さんで良かったって再確認できました」

「嗚呼…、そんなこと言ってくれるのはコハクちゃんだけだよ」

うっとりと言うウリバタケに半歩引きながらも、手袋を外す。

「じゃ、上がらせてもらいますね?」

「おう。 お疲れさん」「お疲れ〜」「も〜帰っちゃうの?」…etc.etc.

「お疲れ様でした」

そう言って、整備班の熱烈(?)な見送りを受けながら、ケイジを後にする。

着替えの洋服を持って、久しぶりに大浴場に行く事にした。

浴場の設備はプロスが福祉を強調するだけあってなかなか立派なものだ。

脱衣所に入ると、先客がいた。

「あ、姉さん」

「あら、コハクちゃんじゃな〜い」

ルリとミナトだった。 二人とも既に衣服は脱ぎ終え、タオルで身体を隠している。

ミナトはダイナマイトバディだし、ルリはそういう属性のお友達が見たら即真っ白に萌え尽きるだろう(笑)

コハクも、胸はミナトほどでないにしても大きいし、ウエストは細いし、それなりに身長もあって「カッコイイ」部類に入る。

本人としてはそんな事はどうでもいいのだが。

「つなぎなんか着て、仕事帰り?」

「ええ。 洗って返さなきゃいけないから、丁度いいかなって」

ここの浴場の直ぐ側にはランドリーがある。

入る前に洗濯し始めれば、いいころあいで風呂から出てこれるだろう。

「先に入ってるからね」

ルリを連れて行くミナトのその姿が、まるで母子の様で少し可笑しかった。

コハクも早々にランドリーにつなぎを任せて、風呂に入る。

更に先客がいた。

「よっ!」「やっほ〜♪」「紅白参加、コーハクさん、か…。 ククク」

お馴染み、パイロット三人娘。

ちなみにコハクを入れて四人娘と言われる事もあったりする。

「ども」

一通り談笑しつつも身体を洗い終えると、全員でサウナへ。

話題は突然料理の話になる。

「リョーコちゃん達はお料理するの?」

話題を振ったのはミナト。

ちなみに彼女もよく料理はするそうだ。

「アウトドアなやつならな
 でも、こないだまで、ずっと軍用のレーションだったから、最近やってねぇな」

「わたしはずっと忙しくて、インスタントな食事だったから〜」

これはヒカル。 何故忙しかったか…、理由は簡単。

同人誌作成でずっと死線をくぐっていたから(笑)

「修行してたから、ずっと自炊」

イズミさん、貴女の修行って……

「しゅ、修行って…」

「気にすんな。 コイツのは何時ものヤツだ」

ミナトが二の句を言えないでいるのをリョーコがフォロー。

「そ、それで、ルリちゃんとコハクちゃんは?」

「私は食べるのが専門ですから…」

「私は作るのが専門ですから」

ルリの口調を真似てコハクが続ける。

「へぇ。 ルリちゃん、コハクちゃんの手料理ってどう?」

「とっても美味しいですよ」

簡潔に答えると、ミナトが今にも涎を垂らしそうな勢いでコハクに迫ってくる。

ある種の危険な気配にコハクは思わず怯む。

「いいなぁ〜。 ね、私も食べてみたいな♪」

「あ、オレも」

「はいは〜い。 私も〜♪」

「象を食べたい…、食べたいゾオ。 ククク」

「いや、そんなに迫られても…(汗)」

冷や汗たらたらで迫り来る飢餓状態の乙女達に追い詰められるコハク。

助けを求めようとルリに視線を送るが…

「久しぶりに、姉さんのチャーハンが食べたいです」

ルリのこの一言で、コハクはホウメイに厨房を借りることになった。

別に、キッチン程度なら部屋に備え付けのものがあるのだが、量も作らなければならないし、電気調理器なのでチャーハンが美味しくならない。

だから、厨房のコンロを借りようとなる訳だ。

しかし、料理長のホウメイにいきなり頼む事もはばかられ、一応コックのアキトを通して依頼する事になった。

「なんだい、それぐらいならいつでもいいよ
 遠慮するこたぁないさ」

と、寛大なお言葉と共に許しが出たので、アキトが横で練習する中、チャーハンを作ることになった。

「お? コハクちゃんも作るのかい?」

突然声をかけてきたのはウリバタケ。 数名の整備班員もいた。

「まぁ、ここにいるからには作りますけど…」

とたんに騒がしくなる整備班員達+ウリバタケ。

「なぁなぁ、コハクちゃんて料理上手なの?」

「さぁ?」

どうにか誤魔化そうと言葉を濁すが、その思惑は脆くもルリの一言で崩れ去った。

「とっても美味しいんです」

ボソリと呟く程度の言葉だったが、彼等の聴覚は正確に聞き取っていたようだ。

伊達に整備はしてないか? …って、関係ないか。

「いいね〜〜!!」「俺にも作って〜〜」「誰に食べさせてんだ?」…etc.etc.

「テンカワとコハクちゃん、どっちが上手いんだ?」

誰かの言ったこの一言で、何故かコハクとアキトが料理勝負をする事になる。

アキトとしては、見習ながらもコックだし、コハクに負ける訳には行かないのだろう、物凄い気迫で作っている。

コハクは別に競うつもりも無いのでマイペースに、ルリのために作っていく。

しかしながら、包丁捌きは互角でそのまま調理に入る。

最近は、すっかり使う事のなくなっていた中華なべは、思いの他上手く扱えた。

その上手さは、ホウメイをして「もう十分一流だね」と言わせしめる程だった。

程なくして完成。

タイムはほぼ同時。

微妙にアキトのプライドを傷つけてしまっただろうか?

そんでもって、ホウメイ、ルリ、何故か通りがかりのジュンによる味見…

――アキトのチャーハン――

ホウメイ 「チョイと火の通りが甘いかな?」

ルリ   「普通。 いたって普通です」

ジュン  「美味しいと思うけど…」

――コハクのチャーハン――

ホウメイ 「素材の味が生きてるね、美味しいよ」

ルリ   「美味しいです」

ジュン  「うん。 美味しい」

――ウリバタケ的判定――

「1:3でコハクちゃんの勝ち〜」

周りの騒ぎを他所にがっくりと項垂れるアキト。

(悪い事しちゃったかな…)

コハクはそう思いながら、ミナトやリョーコ等に催促されチャーハンを作りつつそれを見る。

それでも手が止まらないのは流石と言うべき所だ。

餓えたお客に料理を出す。

口々に賛辞を受けつつもがっくりと肩を落したアキトの後姿を視線で追う。

 




アキトの傷付いたプライドを癒す(誤魔化すとも言う)ための逃げ道。

その逃げ道は…、同居人のガイ(ヤマダ)のよく見るアニメ、ゲキガンガーだった。

何もせずにボケェ〜〜っとスクリーンを見上げている。

ウリバタケにガイが呼ばれ、一人でゲキガンガーを見ているアキト。

それすら気にせずにアキトはスクリーンを見上げる。

そこにマスターキーを使うと言う荒業(職権乱用とも言う)で勝手に部屋に入ってきたユリカが料理を持って来ていたのだ。

見るからに怪しいその物体は、果たしてなんと言う料理なのか?

そんな事を聞く事すらままならず、アキトはユリカに「食べて」と迫られる。

アキトは取り合えず女性に弱い。

特に押しの強いのには絶対にとまで行かないが、大抵逆らえない。

しぶしぶその料理を食べてしまった…

「んぎゃあぁぁぁぁぁ!!!?!!」

悲鳴が艦内を走り回る。

「アキトさん! 大丈夫ですか!!?」

メグミ登場。 手には怪しい液体を入れたグラスがある。

アキトはその色に気付かず、それを一気に飲みほす。

第二の悲劇、発生…

「ふんぎゃあぁぁぁぁぁ!!!?!!」

再び艦内に響く悲鳴。 合掌(笑)

「お前等、出てけぇぇぇ!!」

二人を追い出すと、取り合えず口の中をどうにかサッパリさせて、やっと落ち着けた。

『アキト、イチャツクのは構わないから静かにやって
 五月蝿くてまともに寝られない…』

下の階の部屋の住人、コハクからの突然のクレーム。

だが、クレームよりもまず先にアキトが思った事、それは…

「ど、どうゆうカッコしてんだよ!?」

鼻頭押さえながら言うな、アキトよ(笑)

まぁ、年頃の乙女の柔肌がシーツ一枚で隠れてるだけなら誰でもそうなるか?

しかも胸の頂が透けて見えそうで見え無いと言う究極のチラリズム(爆)

ベットに寝ている状態なので、広がった髪の毛がまた…

そういう事をしている最中を思わせ、アキト君の雄を刺激したりもしている(爆)

『五月蝿い。 迷惑だって事をわきまえて。 いい?』

有無を言わさぬ語気の強さに押し切られ、「はい」と言う。

『ん。 じゃ、オヤスミ…』

コハクは基本的に低血圧だったりする。

要するに、この時クレームを付けた事を覚えてない(爆)

が、そんな事をアキトが知るはずも無く、次に合うときにとても決まりが悪かったそうな…

 




「コハクちゃ〜ん、最近アキトが部屋から出てこないんだよ〜」

アキトパワーエンプティ―状態なのか、ヘナチョコ状態のユリカがぼやくように言う。

「そうなんですか…」

アキトを料理対決で負かせた張本人なだけに、責任がまったく無いと明言できないコハクは、渋々と行動を起こすのだった…


名付けて、「アキトの自信をつけよう大作戦」(命名、ミスマル・ユリカ)

メンバーはこんな感じ。

ユリカ、メグミ、コハク、ルリ、サユリ、リョーコ、ヒカル、イズミ。

何気にホウメイガールズリーダー(厨房アシスタントリーダー)のサユリさんは初登場だったりして。

それはさておき、微妙なるこのメンバーがいかにしてアキトを立ち直らせるか…

ユリカ「どうしたらいいのかな?」

コハク「とりあえず、一人ずつ励ましに行くとか?」

ルリ「姉さん、何で私まで?」

コハク「誰かさんが余計な事言うからよ。 罰ゲームだと思って付き合って」

ルリ「…はい」

サユリ「とにかく、チャレンジしましょうよ!」

ヒカル「ど〜する、リョーコ。 ライバルが一杯だよ!」

イズミ「特攻しないと取られるわよ?」

リョーコ「な、俺はそんなんじゃねぇってんだよ!」

ユリカ「とにかく、行ってきますね〜」

――と言う事で、第一号・それ行けユリカ――

アキトは展望室から外を眺めている。

「ねぇねぇアキト。 一緒にお料理しようよ?」

「お前、この前の料理で暫らく厨房に立ち入り禁止だっただろ?」

「あ…」

「………バカだな」

「うえぇぇぇ〜〜ん!! アキトのバカぁぁ〜〜!!」

ユリカ、あえなく撃沈。 ま、日頃の行いの現れですな。

――取り合えず、第二号・リョーコ出陣――

「おい、テンカワ
 こんなトコで腐ってないで、シュミレーター、付き合えよ」

「でも…」

「でももヘチマもねぇんだよ
 ほら、行くぞ!」

無理やりシュミレーターに入れる事に成功。

「じゃ、行くぜ」

そして、いつも通りにアキトをボコボコにする。

「はは。 やっぱ俺って、半端だよね…」

リョーコ、地雷を踏む。 マイナス効果アリ(爆)

――それ行け同僚・サユリ登場――

「テンカワさん、どうしたんですか?」

「ん、ちょっとね」

「前まであんなに一生懸命に練習してたのに…」

「なんか、趣味に負けちゃって…
 俺って趣味の領域すら出てないのかな、って…」

「そんな事無いですよ!
 私だって、アシスタントくらいしか出来なくて…
 でも、テンカワさんは最初の頃よりずっと上達してるじゃないですか!」

「…そうなのかな?」

「そうですよ!」

「…上達してるのに負けてるんだよね」

「あぅ…」

サユリ撤退。 アキトの傷は深いぞ!

――真打登場!?・メグ姉の悩み相談室――

「どうしたんですか、アキトさん?」

「なんか、皆俺を励ましてくれようとしてるんだよね…
 それなのに、なんか八つ当たりばっかで…
 ホント。 ダメ人間だよね…」

「そんな事無いですよ。 皆が心配するくらいのいい人じゃないですか」

「そんな事無いよ…」

「アキトさんは諦められるんですか?」

「今なら諦められるかもしれない……」

「そんな…」

メグミ、先行者の波に揉まれて撃沈。

それにしても、アキトの傷は治るのだろうか?

――それ行け元凶シスターズ・ホシノ姉妹が行く――

コハク「どうやら盛大に凹んでるみたいね?」

アキト「おかげさまで」

ルリ「減らず口が叩けるぐらいです。 大丈夫ですね」

コハク「そうね。 廃人にはなってないみたい」

アキト「お前等なぁ…」

コハク「どう? 皆の同情もらって少しは元気出たでしょ?」

アキト「別に、同情されたって…」

ルリ「なら、どうして何時までもここにいるんです?」

ちなみにアキトはユリカの時と同じ位置にいます。

アキト「何所にいたっていいだろ?」

コハク「あのさ。 そんな陰鬱そうな顔して憩いの場にいるのは反則
 かまってくれって言ってるようなものよ?」

アキト「そんなつもりじゃ…」

ルリ「結果は同じです」

コハク「私に負けたのが悔しい?」

アキト「当たり前だろ!?」

コハク「なら、まだ料理をする気はあるんでしょ?」

アキト「………」

コハク「逃げるなら構わないけど、そんな調子じゃ、これから先ずぅ〜〜っと中途半端なままになるわよ?」

ルリ「続けるにしろ止めるにしろ、結局自分で決める事よね」

コハク「やる気があるなら周りなんて気にしなきゃいいじゃない
 自分の満足行くものが出来て初めて他の人に満足してもらえるんじゃないの?」

アキト「…わかってるさ」

コハク「なら、言葉は要らないでしょ」

ルリ「味見なら協力します。 遠慮はしませんから、そのつもりで」

アキト「…ははは、お手柔らかにお願いします」

料理の傷は料理で直す。

微妙に無理矢理ながらも「アキトの自信をつけよう大作戦!」は成功らしい…

――ホシノ姉妹のいなくなった後での談合――

ユリカ「なんか、アキトってコハクちゃんと仲いいよね…」

メグミ「確かに、私達より一緒にいる時間は多いですし…」

リョーコ「そんな事言ったら、俺だって同じ条件だろ?」

ヒカル「お? 何はりあってんの〜〜?」

イズミ「太古の馬、太古馬、対抗馬… ククク」

リョーコ「うっせぇ!!」

サユリ「対抗って事じゃないですけど、私も一緒にお仕事してますよ?」

メグミ「そう言えば、コハクさんってアキトさんの事、呼び捨てですよね?」

一同「確かに…」

リョーコ「でもよ、何時から呼び捨てなんだ?」

メグミ「殆ど最初からです。 幼馴染とか…、艦長、心当たりありませんか?」

ユリカ「え? う〜ん…… どうだっけ?」

サユリ「大事な事ですよ! 思い出して下さい!!」

ユリカ「えーっと……。 う〜〜んと……、あれ? もしかして…」

一同「何?」

ユリカ「たまに一緒に遊んだ女の子かな?」

サユリ「髪の毛の色、思い出せますか?」

ユリカ「白かった…。 ううん、ピンクだった。」

リョーコ「じゃ、アイツだな」

メグミ「幼馴染がライバルか…」

サユリ「コレはちょっと厳しいですね…」

ユリカ「ねぇねぇ! 私も幼馴染だよ!!」


――あとがき――

【幻魔狼】はい、前回の予告から悩みもせずに次回のゲストをお呼びしました〜

【ルリ】 こっちでは初めまして。 ルリです

【幻魔狼】ま、メインヒロイン(其の二)なんだから出て来て当然ってワケですよ

【ルリ】あ、そうだったんですか?

【幻魔狼】ルリちゃん、設定くらい確認してもらわないと…

【ルリ】あぁ、私はココでなくてもヒロインになれますから、気にしていなかったんです

【幻魔狼】あ〜、そりゃそうだ

【ルリ】で、私にはどんな制作秘話があるんですか?

【幻魔狼】コハクさんにどの程度感化されているのか、これを決めるのに迷ったですよ

【ルリ】……それだけ?

【幻魔狼】アキト×ルリにするかしないかは今現在ですら考え中だったりします

【ルリ】問答無用です。 アキト×ルリでない小説に存在する意味はありません

【幻魔狼】それは言い過ぎでは…?

【ルリ】ルリドリ〜ル

ギュイィィ〜〜ン  バリバリバリ!

【幻魔狼】みぎゃあぁぁ〜〜!!!

【ルリ】ルリドリルについては『機動戦艦ナデシコ。続・お洒落倶楽部』を聞いてください

【幻魔狼】ぐふ………←自らの血の海に沈む

【ルリ】あぁ、まだ次回予告が……  って、無理そうですね
     じゃ、私が……
     ウリバタケ・セイヤ、プレゼンツ
     メイド戦隊ナデシコ、第十二話。 萌えよ、悩殺ダイナマイ!

【幻魔狼】本編とはなんら関係のない、ブラフです。 悪しからず

【ルリ】バカ?

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