二つの宝石 これからの『艦長』は誰だ!?

『と言う訳で、元艦長の責任の取り方は?』

言い出しっぺであるコハクによってユリカに伝えられた、責任の取り方を問う質問。

固唾を飲んで見守るクルー。

『皆を危険に晒した訳だし、職を辞めることで責任を取るしかないと思うの』

「そうですか…」

残念そうに言うプロスだが、決めていることを覆すような事を言ってまでユリカに肩入れは出来なかった。

プロスには崩す事の出来ない立場があるのだ。

『それでいいのね?』

『もう、決めましたから…』

コハクの確認にユリカが答え、処分が決定した。

「それでは、ナデシコはユーチャリスの修理完了次第地球に向かいますので、寄港した際に降りていただくという事で。」

プロスがそう締めくくり、話しは終わった。

「それから、艦長募集を開始いたします
 立候補者は用意しておいたフォームに必要項目を入力した上で送ってください
 投票はもう暫らく先になりますので、それまでどなたが妥当なのか、よくお考え下さい」

これで言い終わったとばかりにプロスはルリに目配せし、通信を閉じるようにとジェスチャーする。

それに従い、ルリが通信を閉じる。

「それでは、私は執務室に戻りますので」

プロスが出て行くと、ブリッジにはなんともいえない空気が漂う。

ナデシコ特有のおちゃらけな雰囲気など微塵も伺えない。

重苦しいまま、警戒態勢が続く。

 


『君、今度の艦長は使いやすい人を頼むよ?』

『ルックス重視でいいからね』

「はぁ…」

プロスが前にしているのは上役達と連合軍の上級仕官達だ。

彼等の好き勝手な言葉に、プロスは返答すら煩わしく思えてきた。

『あの子供とかでも良いんじゃないでしょうかね?』

『人権云々と五月蝿いだろう』

『いえいえ、あくまで投票で選ばれたんですから、我々の弁も立つでしょう』

(下衆な人たちですねぇ…)

表情には一切出さず、プロスは会話を聞いている。

こういった害意のある連中からナデシコを守るのは自分の役目とプロスは自負している。

スカウトしてきた責任といったところだ。

「あくまで、投票結果を尊重いたしますのでお忘れなく
 団体票等があれば直ぐにばれてしまうような事になると不味いですので、はい」

『まぁ、そのあたりは君に一任しておくとしよう
 しっかり選んでくれよ?』

「はい。 かしこまりました」

通信が終り、ウィンドウが消えると椅子に身体を預ける。

「いやはや、社長派はよくもこんな下衆共を飼っていられるものです」

眼鏡を外し、目元をほぐしながら呟いてしまった。

(いけませんね、いつもならこんな呟き程度は抑えられるのですが…)

『そう言うプロスさんは会長派なんですか?』

極力驚いたのを見抜かれないように、自然な振る舞いで何時の間にか開いていたウィンドウを見る。

「コハクさん、プライベートを覗かれるのは困りますよ」

『誰かに言いふらす訳でもないですし、許してくださいね』

「…まぁ、聞いてしまった事を忘れるのは無理な話しですから致し方ないとはいえ、今後はやめてください」

『そうします。 緊急だったり内密な話でない限り、ですけどね』

「それで、どうなされました?」

プロスはあえて突っ込まず、話を本筋に戻す事にした。

コハクやルリのような電子に愛された人間に対し、拒絶は不可能だからだ。

『ちょっと、今後の事についてお話が…』

射抜くような真剣な視線に、プロスは交渉する時に似た緊張感を感じ取った。

「お聞きしましょう」

覚悟しておかなければならない。

本能的に身構えて、プロスは話しを聞いていく。


初めは皆、乗り気ではなかった。

それがどうして、こうも盛り上がっているのだろう?

ルリは会場セッティングを始めている整備班のメンバーをブリッジで開いたウィンドウ越しに眺めつつ思う。

事の発端はプロスが『艦長になった人はアイドルとしての道が開かれる』と言ったからだ。

それに釣られるように、元気の無かったクルー達が盛り上がり始めた。

プロスの乗せ方も上手い物で、何時の間にか艦長選挙から美少女コンテストになっていた。

一部でルリの様に一歩退いた所から見ている人間に批判があるが、それも少数だった。

火星から生還し、浮かれているからかも知れない。

修理中のユーチャリスは専用部品が無い為に代用品をコスモスで加工しながら作業を進めていて、まだ時間がかかる。

戦闘もしないのでバカ騒ぎする余裕があるのも原因だろう。

「私も出てみるんですよ」

「あれ、メグちゃんも?」

「え? ミナトさんも出るんですか?」

「うん。 年齢制限は無いしね」

自分を挟んでそんな会話をする二人。

「バカばっか」

つい呟いてしまうが、それを気にするのはナデシコクルー内ではコハクくらいだ。

「ね、ね。 ルリルリは出ないの?」

「私、出ませんよ。 利用されるのは御免です」

「え〜?
 艦長になってもすること変わらないみたいだし、いいんじゃない?」

「ミナトさん、嫌がってるのに無理矢理誘うのはどうかと思います」

そう言っているメグミだが、本心は別にあったりする。

(ルリちゃんが出ちゃったら、ルリルリFCの票が全部行っちゃうじゃない!
 ただでさえ散らばりがちな票が集中したら、私のアイドル声優への道が!!)

とかなんとか(苦笑)

「ん〜、それもそうね
 でも、もったいないなぁ…」

(勘弁して…)

ミナトの視線にそっぽを向きながら、内心で呟くルリだった。


「リョーコは出ないの?」

ちくりちくりと裁縫中のヒカルがリョーコに尋ねる。

パイロットの三人娘は同室で、今は三人共それぞれの思うようにリラックスしていた。

ベットに寝そべっていたリョーコは、ヒカルの方を見て聞き返す。

「出るって何にだよ?」

「コンテスト。 出ないの?」

「あぁ。 オレのキャラじゃないし、出ねぇよ」

「そっかぁ〜
 じゃ、イズミちゃんは?」

「円で出来た鳥。 円、鳥。 エントリー。 ククク」

ぽろろんとウクレレを弾くイズミ。

殺る気満々のようだ(爆)

「へいへい。 せいぜい頑張りな」

――― 一番星コンテスト

そう書かれたポスターを思い出し、そして父親の言った言葉を思い出す。

(オレの一番星、か…)

再び寝そべって天井を見上げる。

(部屋で、宇宙で、一番星を見ることは出来ねぇよ…)

そんな事をふと思ったリョーコだった。


「いや〜、こっちに来た途端にイベントとは、歓迎会でもされてる気分だね〜」

ははは、と爽やか風に笑いながら準備中の会場に入るアカツキ。

ナデシコがコスモスから離れてから三日間。

その僅かな間に、大関スケコマシの称号を得ていたりする。

「お、アカツキ。 お前も手伝え」

会場設営中のウリバタケがアカツキを見て手招きしていた。

結構大変そうである。

「遠慮しておくよ。 僕はパイロットだ」

何時いかなる時も手は開けておかないとね。

そう続けようとしていたのだが、途中で言葉が止まった。

――― MC、解説募集中

ポスターに書かれているその文字を確認したからだ。

「それが理由になるか!」

言葉を区切ったと思われたのか、ウリバタケが怒ったウリバタケが吼える。

「いや、僕は設営じゃなくて解説希望だからね♪」

アカツキは言いかけたもっともな台詞を切り捨てているのをおくびにも見せずに笑う。

「おお、流石は大関スケコマシ。
 お前以外に適任はないと思ってたぜ!」

ウリバタケはそれに気付かずに喜んでいる。

アカツキは知らないが、ウリバタケはMCだったりする。

「誰が大関だ」

スケコマシは否定しないアカツキであった。


一方、密談中のプロスとコハクは、悪巧みをしていた。

「それが本当であれば、私としてもお願いしたいとは思うのですが…
 私の一存でどうこうできる額ではありませんので、ハイ」

『だったら聞けばいいんですよ
 幸い、会長自らナデシコにいらっしゃってるんですから』

ニコリと微笑むコハクだが、策士の笑みは恐いものだ。

(性格が変わってしまっているような気がしますなぁ…)

少し考えを纏める為に時間が欲しかったプロスだが、お気楽トンボの会長さんは部下の苦労を知ることはできなかった。

『プロスくん、ちょっといいかな?』

『丁度いいところに来ましたね、アカツキさん』

このタイミングすら、コハクが狙っていたのでは?と疑いたくなるプロスであった。


浮き足立っているナデシコとは対照的に、修理中のユーチャリスでは静かにゆっくりと計画が練りこまれているのだが、それを知る人は搭乗者の二人だけであった。


「さぁさぁ、艦長候補並びに未来のアイドル候補!
 皆の夢と希望と願望を担う美少女達のアピールタイムだ!
 MCは私、ウリバタケ・セイヤ。 解説は大関スケコマシのアカツキ・ナガレでお送り致しま〜す」

「だから、大関ってなんだい、大関って…」

げんなりと訴えるアカツキを丁重にというか、テンションに任せて無視してウリバタケは司会を続ける。

「では、ルールを確認するぞ
 一人五分の持ち時間内で歌や踊りでアピールしてくれ
 衣装に制限は無いから私服でも水着でもOKだ」

「ちなみに着替えもありだよ」

「では、さっそくエントリーNo.1番!
 いの一番に参加を決めたこの人。 エリナ・キンジョン・ウォンさんです」

「ちょっと、これは艦長の選挙なんでしょ!?
 そんな弛んだ司会やめなさいよ!」

何時の間にやらステージに立っているスーツ姿のエリナ嬢。

クルーへの自己紹介はいつしたんでしょうね(爆)

「いい? 私は艦長になるためにここに来たんだから、コンテストなんて必要ないの!
 アピールと言うか、公約としては…」

勢い良く捲くし立てるエリナが自分の言葉に心酔している一方で、MCと解説は勝手な事を言う。

ウリバタケ「アカツキさん、やっぱりスーツ姿は色気が足りないようですが?」

アカツキ「まぁ、仮にも社長秘書なんだからカッコ良く見えますけどね
     色気と言われるとやっぱり水着には敵わないでしょう」

ウリバタケ「さて、時間が来ましたのでそろそろ交代となります」

エリナ「だから、私に艦長をやらせれば…」

セイヤが言うのだが、エリナは依然として熱弁中である。

ウリバタケ「しゃぁねぇなぁ…。 撤収班〜」

撤収班一同「「「「「応!」」」」」

セイヤの呼びかけに答えるのは整備班屈指の巨漢五人。

喚くエリナを担ぎ上げて舞台袖へと撤収していった。

ウリバタケ「事前申告ナシに制限時間をオーバーするとああなるから注意してくれ
      じゃ、続いてエントリーNo.2番、我等が整備班の3大アイドルの一人、アマノ・ヒカル嬢のお出ましだぁ!
 歌は『勝利のVだ!ゲキガンガーV』だ!」

「3大って、他の二人は誰なんだい?」

スルーされるアカツキの質問に被るように、ゲキガンガーに出てくる海燕ジョーのコスプレをしたヒカルが歌い始めた。

「ガンガンガガン、ガンガガン♪ 見上げる空に〜♪」

マイクスタンドを握り締め、相当ノリノリである。

ウリバタケ「おぉっと、既に票が入っているようですよ? どう見ますか、アカツキさん」

アカツキ「ま、最初から入れるつもりだった人の票でしょう
     ただ、コスプレ好きの票が何所まで入るのかが勝負どころじゃないかな」

局も最後のパートに入る。

「勝利のVだ、ゲキガンガーV〜♪」

ヒカルがコスチュームを引き剥がすと、中はビキニにパレオという姿に。

ウリバタケ「おお、素早い水着チェンジです」

アカツキ「う〜ん、爽やかなお色気ってやつですねぇ」

ウリバタケ「票も着実に入っているようです」

アカツキ「トップバッターとしては十分な入りでしょ」

ウリバタケ「では、次のエントリーNo.3番、マキ・イズミさんに登場していただきましょう」

チャイナ服姿にウクレレを持ったイズミがステージに立つ。

ウリバタケ「申請では漫談と言うことですが…」

アカツキ「ウクレレで漫談ってのはどうかと思うけどねぇ…」

イズミ「一番の帽子、見つけた・・・一番星なんちって」

ポロロンと弾かれるウクレレがやけに会場に響く。

アカツキ「これは、聞きしに勝る威力だね…」

ウリバタケ「予想通りに票の伸びも今一です」

イズミ「ハワイで着る水着は?ビキニ…
    って実はビキニってビキニ諸島で核実験を行ったことに抗議するために着られたのが事の発端で…」

ウリバタケ「最後には真面目に解説らしきことをしていたようですが、いまいちオチがわからなかったですねぇ…」

アカツキ「実はビキニじゃなくてワイキキって言おうとしてさらにオチていないことに気づいたとか」

ウリバタケ「次、いきましょう」

アカツキ「賛成」

再び撤収班登場。

時間が終わりきる前に退場させられるイズミさんでした。

ちなみに、イズミさんの水着はビキニじゃなくてワンピでしたとさ。

アカツキ「さ、ステージ空いたし次いってみよう!」


『続いてはエントリーNo.4番、声優になる前は看護学校に通っていたメグミ・レイナード嬢です』

ウリバタケの声に合わせ、ステージを映したモニターにはナース服姿のメグミが熊の人形を抱え、針無しの注射器を持って立っていた。

『は〜い、お注射しましょうね〜
 あらあら、注射は飲む物じゃありませんよぉ〜』

とかなんとか。

「ま、あいつ等らしいっちゃ、あいつ等らしいか…」

ヒカルとイズミの出番を見守っていたリョーコは、興味なさげにモニターから目を離した。

別に、する事もないからそのまま見ていても良かったのに、見ていて笑っていても良かったのに、リョーコは見るのを止めた。


『さぁ、これでコンテストもラスト!
 キッチンのアイドル、ホウメイガールズが登場だ』

ウリバタケの声に合わせるように曲がスタートする。

『美味しい料理が食べたいね♪』

『一日三食じゃたりないね♪』

「へぇ、サユリちゃん達、歌上手いんだ」

「票も結構伸びてます
 まぁ、五人で艦長なんてどうやるのって、疑問ですけど」

ブリッジで仕事中だったルリは、出前に来たアキトの一言にそう突っ込んでみた。

「あはは
 確かにそうだけど、ジュンがやるのは決まってるから大丈夫なんじゃないかな」

「だったら最初から副艦長にすればいいのに」

「そ、それはそうだけど…
 そうだ、ルリちゃんは出ないの?」

言葉に窮したらしいアキトは、無理矢理話題を代えようと切り出した。

「わたし、少女ですから
 大人の都合はよく分かりません」

「あ、そうなの…」

結局返答に窮したアキトは撤退するのであった。

再び一人になったルリは、一人淡々と食事を済ませる。

『さて、全ての出場者が、…あ? まだいる?』

『どうやら推薦枠での出場ってことらしいね』

「担がれる人も迷惑よね」

ポツリと呟いてみる。

ブリッジには他に人はいないので聞かれはしない。

『え〜、推薦者は複数名。 推薦されたのはホシノ・ルリ嬢です』

「…え?」

ウィンドウには、黒いワンピースの水着姿のコハクと一緒に、水色の水玉模様ワンピースの水着で映っているルリがいた。

ちなみにルリはイルカさんフロートを抱えてたりする。

「ど、どうしてこの写真が…」

ちょっと思考が混乱していたルリだが、直ぐに犯人に思い当たる。

「オモイカネ、姉さんにつないで! 今すぐ!」

『あ、もう来た』

コハクが苦笑しながら言うのに対し、ルリは憤懣やるかたなしといった感じで睨み付ける。

「どう言うつもりなんですか?」

『いや、ルリが艦長やってくれればナデシコも安泰かなぁって思って…』

「迷惑です」

『それにね、ナデシコには客観的な判断が出来る人が少な過ぎるの
 その点ルリはそう言った心配はないし、プロスさんや副艦長のサポートがあれば十分艦長も出来る』

「だから、それが迷惑なんです」

『ルリが艦長なら、私も安心できるんだよ
 下手な所で沈まないって確信が持てるから』

「…買いかぶりです」

『まぁ、選ぶのは投票する人だから』

「………恨みますよ」

『今度特製パフェご馳走するから勘弁して〜』

「割に合いませんけど」

『じゃぁ、特製ランチセット付き〜』

「普通、ランチセットにパフェを付けません?」

『兎に角、艦長に選ばれたら頑張って』

「特製品は別にしても、やれって言われればやりますけど…」

『って、事だから皆さんヨロシク〜』

「…え?」

『あいよ。 以上がルリちゃん推薦者のホシノ・コハク嬢のコメントだ
 それじゃ、これでホントにお終いだ』

『投票は一時間後に締め切り
 発表はその30分後だから、チャンネルはそのままで』

(…はめられた?)

愕然となるルリが正気を戻すのは、食器を下げに来たアキトが来る三十分後だったりする。


「いやぁ、やってしまいましたなぁ…」

『ルリには可哀想な事をしちゃったな…』

「いや、それで形が付くなら止む負えまい」

プロスの執務室には、ゴートとウィンドウ参加のコハクがいた。

『それで、結果の方は?』

「クルーの票は狙い通りにメグミさんやヒカルさん、ホウメイガールズの皆さんやルリさんにばらけました
 Rユニット搭乗の皆さんはエリナさんやルリさんに入れているようです
 票差的にはルリさんとエリナさんが僅差といった所ですかね」

「クルーはお気楽、民間は規律を求めたようだな」

『まぁ、Rユニットの皆さんは地球でおさらばですから、まともそうな人を選ぼうとしますからね』

「しかし、それでは何故ルリ君に票が?」

『ユーチャリスに私が乗っているって事の意味がわかりますか?』

ゴートの質問に、コハクは逆に質問を返す。

「貴女以外に適任者がいないからでは?」

『それだけじゃ理由が足らないわ
 私が操縦できるだけで乗せようと思う?』

「あぁ、成る程。 幾分の信用が無ければ無理でしょうなぁ…」

『そう。 その私が絶対の自信を持って推したからこそ、票の入りが良かった訳ね』

「しかし、それだけの理由で投票を?」

『まぁ、エリナさんはネルガルの回し者だし、ルリは意外と毒舌だったのが良かったんでしょ(苦笑)
 それ以外の人が艦長じゃなくてアイドルを目指していたのもポイントね』

「本人のやる気はどうなんだ?」

『それは…、何ででしょうね(苦笑)』

((そんなんでいいのか…?))

確信犯を目の当りにして、何となく敵に回したくないと思う二人だった。


「さぁ、投票結果が出揃ったみたいだ!
 そろそろ結果発表を始めるぞ!」

興奮気味のウリバタケが絶叫するように言う。

隣りのアカツキはちょっとうんざり顔だったりするが、ウリバタケが気付くはずも無い。

ウリバタケ「さて、諸事情により5位からの発表だ!」

アカツキ「結果自体は後々公開するから、確認したい人は自分でしてくれ」

ウリバタケ「じゃ、まずは5位!」

アカツキ「元声優ながら、それ以前は看護学校に通っていたという意外性を見せてくれた彼女
     メグミ・レイナード!」

パっとメグミの顔がモニターに映る。

愛想を振り撒こうとしたところで画像が切り替わるのはお約束(笑)

ウリバタケ「続いて4位!」

アカツキ「アイドルという意味ではダントツ
     可愛く清楚に歌ってくれたこの5人
     ホウメイガールズ!」

メグミの例をみて考えたのか、ポーズをとって待ち受けていたようだ(笑)

ウリバタケ「さて、トップスリーの発表だ!」

アカツキ「3位はこの人!
     大人の魅力で数々の男を落したんでしょうこの人
     ハルカ・ミナト!」

うふふ、と手を振るミナト。 さて、何人ノックダウンしたのやら。

ウリバタケ「トップツーは僅差で決まったぞ!」

アカツキ「我等がネルガル社長秘書でありながら副操舵士としてナデシコに来た彼女
     エリナ・キンジョン・ウォン!」

二位だったのが不服らしく、不機嫌そうなエリナ。

ウリバタケ「そして、栄光の一番星に輝いたのは!」

アカツキ「本人にその気が無くても回りを魅了して止まない美少女!
     推薦が無ければ出てこなかったであろうこの人!
     ホシノ・ルリ! 君が艦長だ!」

ウリバタケ「一言いただきましょう!」

モニターには、いつも通りオペレーターシートで作業していたルリが映る。

ルリ『一言って言われたって、何を言えばいいんだか…』

ウリバタケ「艦長としての意気込みなんかを聞かせてくれ」

ルリ『はあ…。 取り敢えず沈むような事はさせませんから、協力よろしく』

アカツキ「可愛いとはいえ、色気が無いねぇ…」

ルリ『私、少女ですから』

切って捨てるルリは、いささか不機嫌そうであった。


「さぁ〜って、ココをこうしてあっちはこう
 コレをコイツに繋いでっと。 後はカバーをつけてやれば…
 ほれ、出来上がり」

ブリッジの一番上。 艦長席のコンソールを弄っていたウリバタケが作業を終えた。

「ご苦労様です、ウリバタケさん」

「これぐらいは朝飯前だって
 早速だが、接続テストをやっちまってくれ」

「はい」

ルリが退いたウリバタケと入れ替わるように椅子に座り、追加されたオペレーター仕様IFSコンソールに手を乗せる。

流石にオペレーターシートとまったく同じとは言えないが、遜色ない性能はある事を確認する。

「大丈夫みたいです」

「おお、それは良かった
 ウリバタケさん、ご苦労様でした
 ルリ艦長はこちらに来ていただけますか? 艦長服のサイズ合わせをお願いしたいのです
 ミナトさん、お願いします」

何時の間にか後ろに現れたプロスの言葉に、協力者らしいミナトがノリノリでルリを連れて行った(拉致とも言う)

「さて、皆さんにお知らせしておかないとならない事があります
 我々が軍への出向となっていることは既にご存知ですね?」

プロスがクルーに言葉が浸透するのを待ってから次の言葉を継ぐ。

「現在、ナデシコには提督、副提督の席が空いています
 そして、提督の席に就く方が明日到着されるそうです
 既にミナトさんとルリ艦長には伝えてありますが、全クルーに通達はしていません
 それというのも、提督として乗艦されるのがムネタケ・サダアキ少将でして…」

言葉を濁すプロスだが、ブリッジには沈黙が流れる。

誰かしら何か言うだろうと思っていたプロスが一人一人の様子を見てみれば…

ウリバタケ(ムネタケ? 誰だ?)

ジュン(軍人なんて、フクベ元提督以外乗ってたっけ?)

メグミ(誰だっけ…?)

ってな感じである。

「おほん。 キノコ副提督です」

一同「ああ!」

哀れ、キノコといわれてやっと思い出してもらえる程度の認識のムネタケであった。

「一応、皆さんにはいい思い出のある人ではないので、心構えをと思ったのですが…
 不要な心配だったようですねぇ…」

やれやれといった感じでプロスが呟く。

「でも、提督って必要なんですか?」

「出向する側ですから、あちら側の人間がいないと色々と不味いのです。 はい」

全員が全員、仕方ないかと諦めた。

「ユーチャリスの補修の方も明日終わるそうなので、両艦の準備が整い次第発進とします
 それまでは今と同じ第二警戒態勢を維持しますので、よろしくお願いします」

敵が来ないので、ダレた雰囲気は続いているものの出発が明日と分かり、にわかに活気が戻って来た。

それを肌で感じて、プロスはゴートに耳打する。

「さて、私はコハクさんにお呼ばれしましたから、後の事はお願いしますね」

「それはいいが、何が起きた?」

「さぁ? 話しは来てから…、と言われてしまいましたからね
 兎に角、一度行って見ない事には分かりません」

「そうか…」

「それでは、頼みましたよ」

そう言って、プロスは艦載機のヒナギクへと向かって歩いていった。

「…むぅ」

ゴートは一人、ある種の嫌な予感に背筋を寒くさせていたとさ。


「それで、お話しとは?」

「まぁ、ちょっとしたお願いです」

ユーチャリスのブリッジで、ドリンクのパックを片手に持ちながらコハクとプロスは話しを始めた。

「ネルガルのMC事業、表向きは停止してますよね?」

「ええ。 法律で禁止されましたからね」

「でも、裏では未だに続いている」

「そのような話しは私には伝わってきていませんが?」

「…ネルガルのシークレットサービスのトップに立つ人間が知らない、で白を切れると?」

「おや? そんな部署はありませんが?」

状態は狐と狸の化かしあい。

コハクは話しを急いでいた様で、直ぐに本題に入った。

「…まぁ、それでも構わないので聞いてください
 地球帰還以降、ユーチャリスは独自に地表のチューリップの駆逐を行ないます」

「それは困りますなぁ
 建前上、ユーチャリスもネルガルの戦艦ですから…」

「でも、軍へ出向させるのはナデシコだけなんでしょう?
 ユーチャリスはドッグで分解されて、細部まで調査される…。 違いますか?」

「おやおや、バレていましたか」

「私は、スパイクと一緒にMC保護を強行します
 会長派にとって、悪い話しではないと思いますけど?」

「…それは、私が独断で採決出来る許容を超えていますなぁ」

MCの保護を行なうと言っても、秘密裏に行なっている事に介入するのだから、正面から行く訳ではない。

MC関連の研究は、会長派と対立している社長派が行なっており、それを表に引っ張り出せれば会長派の発言力を削ぐ事は出来る。

しかし、元々ユーチャリスは研究用にバラされる予定だった物なので容易く手を離すわけには行かない。

プロスの立場では決められないのは当然の大きな話しである。

「では、ナデシコに戻って会長と合議してくださいな
 そうそう、ユーチャリスの詳細はイネス博士他、火星で乗った整備士さん達も知っていますよ」

「…わかりました
 それでは、検討させていただきますよ」

ブリッジから出る寸前、プロスは背中を向けてコハクに尋ねた。

「MCを助け出したとして、あなたは何をさせるつもりなんですか?」

「機械ではなく、少年、少女にしてあげたいだけですよ
 何をさせると言う問は、ネルガルにこそ問い掛けたいですね」

プロスが返した苦笑は、正解が何所にあるのか解らないとの意味だった。


――あとがき――

【幻魔狼】 さて、今回は前回呼びそこねた3人娘最後の一人、マキ・イズミさんです

【イズミ】 マキが苗字で名前がイズミ。 よろしく

【幻魔狼】 …イズミさん、貴女の台詞には毎回苦労します

【イズミ】 九匹の狼。 九狼、くろう…  ククク

【幻魔狼】 それそれ

【イズミ】 だって、言わないと出番ないもの

【幻魔狼】 言っても出番ないでしょうが!

【イズミ】 出刃の内臓、出刃内臓。 出番、ないぞう…  ククク

【幻魔狼】 はぁ、疲れるんでそろそろ次回予告をお願いします

【イズミ】 十回の予告ホームラン。 じゅっかい予告、じっかい予告、次回予告… ククク

【幻魔狼】 こりゃダメだ…
       やっと修理の完了したユーチャリスを同伴して地球に戻ったナデシコ
       Rユニットの取り外しを行なっている間に訪れる姉妹の別れ!
       ユーチャリスは、ナデシコはどうなるのか!?
       次回、見知らぬ『明日』をお楽しみに〜

【イズミ】 葦の田んぼ。 葦田、あした…  ククク

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