二つの宝石 「男らしさ」はどこ?

「さて、コレでよし…」

白銀の…、もとい、無塗装のエステバリスのアサルトピットの中で、ホシノ・コハクは呟く。

ポニーテールに纏めた肩にとどく程度の長さの薄桃色の銀髪を片手で弄り回しながら、黄金の瞳をモニター越しの外に向ける。

下でエステバリスを調整している、眼鏡を掛けた整備班班長の眼鏡で無精髭のおじさん、ウリバタケ・セイヤにコミュニケで声を掛ける。

「調整終わりました。 ご苦労様です」

『あいよ。 お疲れさん』

アサルトピットを開けて外に出ようとすると、赤いエステバリスが暴れていた。

『いくぞぉ〜
 ガイ・ス〜パ〜・ナッパァァ〜〜!!』

機動兵器らしくない、アニメチックな動きで拳を突き出したエステはしかし、無理な体勢のため倒れた。

下ではセイヤが叫ぶと言うよりも悲鳴をあげるように声をあげながら、こけたエステに駆け寄る。

「この野郎! 人がせっかく整備した新品になにしやがる!?」

「いやぁ〜、手足が自分の思うままに動くロボットなんて憧れるだろ?
 うれしくてさ〜〜」

こけた状態のエステの胸部装甲が開き、中から熱血系のアニメの主人公っぽい男の人が現れる。

セイヤが手元のコンソールを操作して、パイロットの名前を呼び出したようだ。

「だからって新品に傷を付けるなよ、ヤマダ・ジロウ」

「違うんだなぁ〜
 それは世を忍ぶ仮の名前…

 俺の本当の名前、魂の名前はダイゴウジ・ガイだ!」

「個人の趣味に口をはさむ気は無いですけど、改名するならちゃんと戸籍変えないと」

コハクもエステ内で、IFSを使いパイロット名簿を開き、名前を確認する
正規の書類にはヤマダ・ジロウとある

「甘いぞ女! 魂の名前に戸籍は関係ない!」

「甘くていいです。 それより、怪我はないの?」

「当たり前だ! これぐらいで怪我など…」

ヤマダが右足でエステの装甲板を踏みしめると同時に顔を青くする。

「…してるみたいね
 セイヤさん、運んであげないと」

「っち、しょうがねぇなぁ…」

足を抱えながら降りてきたヤマダにセイヤが肩を貸し、医務室に連れて行く。

「おっと! そこの青年!」

格納庫の壁面にある廊下にいる、茶色いクセっ毛にヤマダが声をかける。

のほほんとした表情に見覚えがあった。

(え? …テンカワ・アキト?)

火星にいた頃にひょんな事から知り合った少年。

コハクが火星を離れた後は名前すら聞かなかったのだが、何故か直ぐに思い出せた。

もともと知り合いが多い人間じゃない。

思い出せても不思議ではないのだが…

「俺のシートの上に宝物を置いてきちまった! 取って来てくれぇ!」

セイヤに引き摺られながらヤマダが叫ぶ。

アキトは渋々と言った様子でエステに向かう。

ヤマダの乗っていたエステに通信回線を開くと、一旦ウィンドウを最小化。

アキトが乗るのを見計らって声を掛ける。

「久しぶり。 アキト」

『うあ!? な、なんだコレ?』

「コレはコミュニケ
 軍とか研究所では普通にあるけど、一般に的にはまだ普及してないから驚くのも無理ないか…」

『あ、え? コハクなのか…?』

感動の再開(?)を邪魔する事態が起こった。 突然の揺れ。

ブリッジ、いや、正確にはブリッジにいるオペレーターで義理の妹、ホシノ・ルリに通信を入れる。

「今のは何?」

コハクと同じ瞳の色と、瑠璃色の髪の毛をツインテールにした美少女、ルリが応答する。

『姉さん。 今、上が木星蜥蜴の攻撃を受けてます
 一応、艦長が到着したので指示を仰いでみます』

「よろしく… あ、ちょっと!」

アキトがエステを操縦して、地上に向かうリフトに向かっている。

『もう逃げないって決めたんだよ!
 ここで逃げたら同じまんまなんだ!』

「逃げる逃げないの問題じゃなくて…
 って、聞いてる?」

聞いてる様子はない…

『姉さん? 艦長から囮の出撃命令が出たけど…』

コハクはパイロットではなく、整備班所属のオペレーター兼サブオペレーター。

エステの調整は出来ても、操縦は上手くない。

だが、アキト一人に行かせる事は出来ない。

暫らくの逡巡の後、結局コハクはアキトを追う。

「パイロットがいないから代理で出撃します」

『え? 待って下さい! 戦闘なんて出来るんですか?』

「素人さんよりは出来ると思う。 早く援護に来てくれれば大丈夫」

大丈夫ではないだろうが、こうと決めたら貫く性分だ。

妹であるルリにはそれが十分わかっていて、説得は無理だと諦めた。

「アキト、私も手伝う」

機体をリフト上のガイ機(アキト搭乗)の隣に移動させる。

リフトが動き、後戻りが出来なくなった。

『コハクには関係ない。 来るなよ』

「無理。 リフト動いちゃったもの」

悪戯っぽく答え、ルリから送られてきた行動予定表に目を通す。

『ちょっとアンタ達! 私の言うことを聞きなさい!』

目の前に突然コミュニケの画面が開き、アップに表示されたオカマが叫ぶ。

副指令のムネタケ・サダアキ。 これでも連合宇宙軍少将らしい。

『搭乗者、所属と名前を…』

強面のおじさんが出る。

ゴート・ホーリー。 元軍人らしい、いつもムッツリしている。

『コハクちゃん、無理しちゃ駄目よ?』

戦場と言う場所を考えれば明らかに場違いな大人の女性が出る。

ハルカ・ミナト。 元秘書の操舵士で、資格マニア(?)らしい。

『コハクちゃん、実戦に出るなんて無茶だろ!?』

セイヤが心配そうに言う。

『頑張ってね』

そばかすの浮いた、声優じみた声。

もとい、元声優のメグミ・レイナード。 声だけで通信士(笑

わんさかウィンドウが出ること5枚。

もともと繋いでいたアキトとの画面を合わせて6枚だ。

「…前が見えないんですけど」

全部纏めて左側に追いやると、地上からの光りが見えた。

『搭乗者、所属と名前を報告しなさい』

控えめなウインドウで連合宇宙軍の軍服を着た老人が静かに言う。

提督のフクベ・ジン。

コハクは、軍人の貫禄はこうでなければ勤まらないだろうに、と思いつつも答える。

「ホシノ・コハク。 サブオペレーター兼整備班付きオペレーター」

『あ、テンカワ・アキト。 コックっす』

『コック!? 何でそんなヤツがエステに乗ってんだよ!?』
『え〜? でも、結構可愛いじゃないですか〜』
『あ、オマエ! 俺のエステかえせ〜〜!!』
『いいか、君達は我々の指示に従ってくれればいい…』
『あ、メグミちゃんは彼みたいなのが好みなんだ?』
『そこ! 五月蝿いぞ!』
『ち、違います!』
『ホントなら俺が乗ってるんだぞ! 早く返しやがれ〜!!』

アキトの通信画面から怒涛の如く声が聞こえる。

通信画面越しで聞こえるのだから、本人はとてつもなく五月蝿いだろう。

しかし、唐突に、理不尽に、その喧騒は止んだ。

一人の女性の法外な音量によって…

『ああぁぁ〜〜!!!
 アキト!アキト!アキト!アキト!アキト!アキト!アキト!アキトだぁ〜〜!!』

(誰だろう? 聞き覚えがある声…)

『ゆ、ユリカ!? お前、何でこんな所に…』

(ユリカ? …ミスマル・ユリカ。 確かアキトと一緒にいた子…)

コハクの方には映像は来ていないので顔の確認のしようがない。

『やっぱりアキトは私の王子様だね
 ユリカがピンチの時に、また助けに来てくれたんだもの』

『誰が王子様だよ。 大体、俺はお前に聞きたい事があっただけで…』

『うん、分かってる
 でもその前に、敵を誘き寄せてくれてるんだよね』

話がいまいち噛み合っていない。 ユリカが一方的過ぎる。

『何言ってんだ、おまえ。 誘き寄せるつもりなんて……、うわっ!?』

視界が開けた。 そこには戦場。

煙が所々空に上がり、廃墟と化した元建物が転がっている。

その中に、黄色い殻みたいな装甲をしょったのや、赤い蟻みたいな機械が、二機を取り囲んでいた。
黄色いのがバッタ、赤いのがジョロだ。

『な、なんだよこりゃ!?』

「バッタにジョロ。 知ってるでしょ?」

木星から来たと言われている木星蜥蜴と呼称されるエイリアンの無人兵器だ。

コハクは機体の機能の一つ、ローラーダッシュを使って身近なバッタに掌底を叩き込む。

(あれ? 何でこんな事、出来るんだろ?)

コハクは特にこれと言った武術の手解きを受けていない。

なのに、身体、いや、脳は、考えてもいない事をすんなりと実行していた。

掌底を叩き込まれたバッタが宙を舞い、他のバッタにぶつかって爆散した。

それを尻目に、機体は次のバッタを蹴り飛ばしていた。

それと同時に、視界の端に白いモノを捕らえる。

見たことも無い筈なのに、ミサイルだと確信出来た。

機体を無意識の内にバッタの後ろに隠れて回避させ、近くにいたジョロにワイヤードフィストを放っている。

考えてもいないのに、勝手に体が動く。 しかも的確に。

(私が私じゃないみたい…)

他人事のように呆けながら、それでもコハクの乗るエステバリスは戦闘していく。

アキトの事や通信の五月蝿さなど思考の彼方に置き捨てて…





操艦を少しサポートしながら、ホシノ・ルリは義理の姉の戦闘を見物している。

本職はルリと同じオペレーターで、本来なら戦闘になど出て行かないのだが…

彼女は今、いとも簡単にバッタやジョロを破壊していた。

「おいおい、アイツは何者だよ…」
「ホシノ・コハクさん、本当はオペレーターなんですけどねぇ…
 いやはや、思わぬ拾いモノですなぁ〜」
「ふむ。 数多の戦場を渡り歩いてきた猛者の様だ」
「ウソよ! こんな事出来るハズ無いわ!!」
「やだ、コハクちゃん凄いじゃないの〜」

大人達は好き勝手に言うが、ルリには心配でならなかった。

怪我ならいいが、命すら落としかねないのだから。

周りの大人たちのように鑑賞は出来なかった。

「ナデシコ、浮上予定地点に到着」

浮上予想地点に着くと直ぐに報告する。

余談になるのだろうか? 
アキトもどうにか海岸線まで逃げ延びていた。

素人にしては素晴らしい成績だろう。 才能はある。

まぁ、コハクも素人なのだが…

「わかりました。 浮上してください」

「は〜い。 ナデシコ、浮上しま〜す」

ミナトの操舵で、ナデシコは浮上する。

相転移エンジンが本調子でないので、ゆっくりだが…

「アキト。 そのまま真っ直ぐ進んで」

『真っ直ぐって…、海しかないぞ!?』

『大丈夫。 ナデシコが前に出てくる
 付いて来て』

何時の間にかアキトに追い付いていたコハクが陸地を蹴り、バーニアを煌かせる。

躊躇いながらも、バッタやジョロから逃げるためにアキトも跳ぶ。

「ナデシコ、海抜0mです」

『ナイスタイミング♪』

180度回頭しながら浮上しているナデシコの甲板に二機が着艦。

ルリの狙い通りに、木連の機動兵器はグラビティ・ブラストの射界に収まっていた。

「全敵影、グラビティ・ブラストの射界に入ってます」

「それじゃぁ! 全部纏めてズババ〜ンっと!」

ユリカの号令でグラビティ・ブラストが発射された。

内側にひしゃげる様にして、敵影が全て消えた。

「レーダーオールグリーン。 敵影ありません
 地上も奇跡的に死者ゼロです」

報告しているそばから大人達が騒ぎ始めている。

「流石アキト! また私を助けてくれたのね!」
『そんなんじゃない。 俺はタダお前に聞きたい事が…』
「うそよ! こんなのうそよ〜〜!!」
「いやぁ、いい拾いモノでしたなぁ〜」
「うんうん。 照れなくてもいいんだよ、アキト」
『照れてなんかいないって! 俺はお前に…』
「君は何所の部隊にいたんだ?」
『私、軍人じゃありませんけど…』
「俺のエステ返せ〜〜!」
「さて、祝勝会の準備でも…」
『うるさぁぁぁ〜〜い!!』

(来た時から判ってたんだけど、ココの大人って「バカばっか」みたいです。
 …ふぅ)


――あとがき――

とりあえず出してみましたナデFF

コハクは一応オリキャラですが、オリキャラではありません(謎

そこの辺りも気にしながら呼んでみると面白いかもしれません…、が

他のサイトさんでナデFF等を読んでる方には既に想像が付いてしまっているかも知れませんね?

『判った』と思ったら、今すぐ幻魔狼に報告してみよう!!

…まぁ、賞品やら何やらは出るかどうかは未定ですが(苦笑

『アキト×○○○は誰がいいか?』もアンケートしてます

アキトだけじゃなくて他の人達のカップリングでも大歓迎です

叶えられないモノで無い限り、全身全霊を賭して書かせていただきます!!

それでは、次話 「緑の地球」は任せていいの? を、お楽しみに〜

 ↑コレも励みになります!