双子の歩く道 Session 0

「日本か…。 結局帰ってきたんだな…」

NERV専用機で降り立った日本は、離れた時と同じ気候だった

ただ、持っている荷物は今の方が重い

渡った時よりも旅行鞄が大きい物であるせいもあるが、アメリカから日本へ持ってきてはいけない物を持っているのだ

「セイジ君?」

横合いから声をかけられた

そこには、ドイツ留学時代にNERVドイツ支部で会う機会が多かった、葛城ミサトがいた

「ミサトさん。 御出迎えありがとうございます」

「久しぶりね。 チョッチ背が伸びたかしら?」

ミサトは一応NERVの制服を着ているが、普段はもっとズボラである

「さぁ? 自分なんていつも同じようにしか思えませんから」

「相変わらず大人ねぇ〜
ま、いいわ。 早く行きましょうか?」

「はい」

ミサトの後に着いて行くと、直接車で乗り込んできていたらしく、車に乗ろうとしていた

「…入国検査とかいらないんですか?
出国検査もパスだったし…」

「一応国家公務員だもの
メンドイのはぜ〜んぶパス」

「ミサトさんらしい…」

苦笑するとミサトはふくれる

「なによ、何か文句ある?」

「別段。ただ、ズボラだなって思っただけですよ」

「なんでズボラだと私らしいのよ!」

「反論できます?
家を見れば一発でわかりますよ?」

「うぅ…」

ミサトは反論したかと思うと今度は言い負けている

「大人として情けないと思わないんですか?」

「う、うるさいわねぇ! とにかく、早く乗って!」

最終的にこの口喧嘩は、セイジの全面的勝利に終わった

暫く世間話をしながら車を進めていたが、ゲートの前で止まるとセイジに向き直った

「お父さんから何か貰ってない?」

「あぁ、仮パスと手紙。コレですよ」

旅行鞄を開け、封筒を取り出す

中身は“来い”と書かれた手紙と本部用のセキュリティーカードだった

ミサトは手紙を見た瞬間、不信そうな顔つきになる

「これって、親が子供に書く手紙?」

「さぁ? 俺は気にしませんけどね
NERVアメリカ支部で得られる大体の情報は掴んでましたから」

ミサトは解せない表情ながらも車のドアについているポケットから大き目の冊子を取り出す

表紙には“ようこそネルフ江”と書いてあった

「取りあえずコレ、読んでおいてくれる?」

「似た様なのはアメリカ支部でも、ドイツ支部でも見ましたけど?」

「一応目を通しておいて、コッチは本部だからね
書いてあることがチョッチ違うのよ」

「なるほど。 そう言う訳なら読んでおきましょうか」

前に視線を向ければ、丁度ゲートが開き、ミサトは車を入れた






何回目かの同じ場所を通る

「まったく、なんでこんなに入り組んでんのよ…」

「そのセリフ、ドイツ支部でも言ってましたね
…ここより簡単な構造のドイツ支部で…」

セイジの一言でミサトが何も言えなくなる

「ま、いいですよ。 なんとなくわかった気がしますから
どうせ内線あるんだし、監視カメラのついてる所に行けば見つけて貰えるでしょうし」

「なんとなくって…
いいわ、アナタの勘、信じる事にするわ」

ミサトの前に出て、今まで通らなかった道をたどり、建物の中央へ向かう

構造から考えて中央に施設があるはずで、そのために道が分かりにくいだろう
対人工作の一環だ

ドイツ支部もここほどでないにしろこういう構造だった

適当に中央に向かう道をチョイスし、あからさまに中央に向かっていると感じる場所をパスしながら更に進む

すると、エレベーターホールに行き当たった

「あ、ここからならわかるわ」

ミサトがそう言って、先頭が交代する

エレベーターが開くと、そこには先客がいた

「ずいぶんと遅かったじゃないの」

白衣を着た金髪の女性。クールな印象を受ける

「ゴミン! リツコ…
まだここの構造憶えてないのよ…」

「まったく、毎度毎度迎えに行くのは御免こうむりたいわね
…この子が例の?」

ミサトの同僚であり友人のようだ

セイジを見て例のと言った時点でセイジの知識と照合してヒットした人名があった

「もしかして、赤城博士ですか?」

「ええ。 どうして知ってるのかしら?」

「父から今回の手紙とは別にずいぶん前に貰った資料で名前だけ見たんです
E計画でしたか?
これからパイロットをやるんですから資料位は…
これから、よろしくお願いします」

「こちらこそ。 それより、案内したい場所があるの。先ずは乗って」

「ちょっとリツコ。ドコ行くのよ?」

ミサトが文句を言いながらもエレベーターに乗るのに従ってセイジも乗る

「エヴァのケイジよ
貴方もエントリープラグまでしか知らないでしょう?」

「あ、ミサトさん
一応、父さんに到着した事だけでも伝えといて貰えますか?」

「ん? 別にいいけど…」

「そうね。 ミサトはケイジへの行き方
憶えてないでしょうから」

リツコが冷たく言うと、ミサトが顔を赤くして怒る

「ちょっと。 ナニよそれ!
私がそんなに…」

「反論できます?」

セイジの一言にミサトは撃破される

「…わかりましたよ! まったく…」

ミサトが新たにボタンを押して、すぐにその階に到着した

「後で行きますから。 食堂にでもいて下さい

他の場所じゃ、迷っちゃうでしょ?」

「そこまでバカじゃないわよ!!」

捨て台詞を残してミサトが降りると、沈黙が漂った



エレベーターを降りる際にセイジは沈黙を破る

「一度対面を済ませてからシンクロテストですか?」

リツコの表情が一気に険しくなる

「どこまで知ってるの?
少なくとも、一般的な配布用の資料にはE計画は載っていないはずよ?」

「ある程度の深さを満遍無く
ただ、初号機に関しては別腹って事で」

冗談めかした口調も流して結論だけを汲み取ろうとしているリツコに、 とっつきにくさを感じた

「そう…
なら、零号機とのシンクロもやってみる?」

「…そうですね
ダミープラグは早いうちに作れれば計画とのズレも無しになりますからね
協力しましょう」

リツコは、協力という言葉に反応があった。が、それを隠す

気に入らないのだろう。ここまで来ると簡単に印象の改善は出来なさそうだ

「お兄さんの方も後で呼ぶ事になってるけれど?」

「…そうですか
サードインパクトを起こすのに俺より適任である事は確かですね
内気だから…」

(事実を知ってしまった子供に任せるほど肉親を信用できない父親、か)

自らの父親の弱さがそこに見え隠れしているように思える

リツコがゴムボートに乗るように指示したので従って乗る

「貴方は納得して協力しようとしてるの?」

ゴムボートを操縦しながらリツコが尋ねてきた

「さあ? どうでしょうね。三番目の使徒が出てくるまで実感は湧かないと思います
だから、協力するとかしないとかの次元での話にすらなれませんよ」

(なんてね
俺は世界を滅ぼしてまで母さんに執着するつもりは微塵もないよ
父さんはそうでもないみたいだけどね)

心の中で父親を笑いながらも表情には微塵も出さないようにする

「ならどうしてここに来たのかしら?」

「真実を知ってしまった以上、逃げれば消されるのは必至でしょ?」

リツコの顔を見れば当然だという表情をしていた

「それに…
自分が知らない所で、自分の命まで巻き添えにする戦闘があるって、嫌じゃないですか?
核戦争が起きそうになって、当事者が自分だったらどうします?
そのまま戦争させる気にはなれないでしょ?」

それはセイジの思考を表している

“自分に関わる事は自分の手で” この考えがセイジをここまで導いてきた。そして恐らくこれからも…

「ずいぶんと過激な例えだけれど、あながち間違えではないかも知れないわね」

「地球上の人類の存続をかけた戦い
どちらにしろ、根本的な原因は人間が持ってるんですよ
それも深層心理、生まれる前からね」

「…そうね」

そう答えたリツコの言葉は、自嘲しているようにも聞こえた

「さて、この中がエヴァ初号機のケイジよ」

接岸させ、ボートから降りるとドアを指して言う

「久しぶりのご対面ですか
ま、まともに顔も覚えてませんけどね…」

言ってからつい自嘲的な言い方になっているのを自覚し、情けないと思う

自分で自分の事を笑うのは精神的に弱い事だと考えているからだ

本当の意味で強い人間ならば自分の事を笑わず、 真正面から立ち向かう位の勢いで問題に接するからだ

自動ドアをくぐって中に入ると、紫色をした巨大な顔が水面から出ていた

「なるほど…
あの巨大なエントリープラグを入れて何ら支障もなく動かせるサイズがこのデカサか」

「彼方ならもう説明も要らないんでしょうけれど、聞いておく?」

聞いてくれるなと言わんばかりの言い方に、セイジもあえて聞きたいとは思わなかった

「いえ。 手間を取らせるつもりはありませんから
…今のところ使える武器はあるんですか?」

「今、戦闘になった場合はプログナイフだけね
他の装備は武装ビルへの搬入はまだ始まっていないのよ
ここから直に上へ持っていくなら話は別だけれどね」

これまたそんな事は私に聞くなと言っているようにセイジには聞こえた

「そうですか…
ありがとうございました
これからどこに行けばいいんですか?」

「このまま食堂でミサトと合流してもらって、指令室に行ってもらうわ
せっかくここまで来たのだから、私は調整を見直したいから適当に人を捕まえて聞いて頂戴。 じゃ」

スタスタと作業員達の中へ歩いていってしまうリツコ

(こりゃぁ…。 相当毛嫌いされてるな
加持さんはそんなに辛く当たる人じゃないっていってたんだけどなぁ…
もしかしたら父さんが何か言ったのか?)

考えながら手の空いていそうな人を探す

ここには作業中の職員がいるが、一旦道に入ってしまえば人通りも少なくなるだろう

迷子になる可能性がある

ここで誰か捕まえる以外の方法をセイジは選択できないのだ

適当に休憩中の職員達を見繕って声をかける

「スイマセン。 今、手空いてます?」

「ああ。 なんだい?」

会話に割り込んだのだが、三人全員嫌な顔せず聞いてくれた

「食堂まで行きたいんですけど、どうやっていったらいいんですか?」

「あ〜、アレだ
コッチ側のドアから廊下に出て、青い矢印に従って進むとエレベーターに行ける
そのエレベーターで3階上がったら今度は緑の矢印に沿って歩けば見つけられるよ」

一人が入ったのと逆のドアを指して言う

「青、3階上がって緑ですか…。 ありがとうございました」

「あ、ちょっと待った」

別の一人が引き止めてきた

「なんですか?」

「君が例のパイロットかい?」

更に別の一人が確認するように聞いてきた

まぁ、一般市民がここに入れることはありえないのだから当然と言えば当然だ

「そうみたいです
シンクロテストする時には御世話になるかも知れませんね」

「…そうか。頑張ってくれよな
09オーナインシステムなんて言われてるからこそ動かして見せたいんだ!」

熱弁する男に対し、自信ありげに笑んで見せる

「任しといてください。 運はいい方なんです
悪運はもっと強いですし。 …それじゃぁ」

言われた通りに道を行く






「ミサトさん」

先に席に着いていたミサトを見つけると、声をかける

「遅かったわねぇ
迷ってたんじゃないの?」

ミサトがニヤリと笑いながら言う

「残念ながら、結構エレベーターの待ち時間が長くって
この施設も初めてだし」

「それもそうね
で、初めて見たエヴァはどうだった?」

なかなか難しい質問かもしれない

「あの大きさは見慣れないですね
自分で動かすとなると尚更」

「そうね。 使徒の迎撃以外で使えないでしょうしね」

「他に使うとしたら国落としぐらいですか?
で、とりあえず司令室まで案内して貰えます?」

「はいはい。 じゃ、着いて来て」

迷われても困るが、他に頼れる人も居ないので、妥協する

ミサトはその事に気付いているのだろうか?



「ご苦労、葛城一尉。 さがれ」

ミサトは敬礼すると司令室から出て行く
セイジは、ミサトが完全に退室してから口を開く

「久しぶりだね。 父さん」

「ああ。 …解っているだろうが、お前には近日中にシンクロテストをして貰う」

実務的な話しか出来ない父親に少し呆れる

「わかってるよ
で、何所に住めばいいの?」

ゲンドウの後ろに控えていた老人が一歩前に出てくる

「副指令をしている冬月だ
細かい事に関しては私が決める事になっている
一応は本部施設内に部屋を準備してあるが、君が望むなら他の場所も準備しよう」

しばらく考えて、ふと思いついた

「なら、葛城一尉の家の近くに部屋をもらえますか?」

冬月は意外そうな顔をする

「構わんが…
何故葛城一尉の隣なのかね?」

「ドイツ留学時代から葛城一尉と面識がありまして
他に知り合いは父さんくらいですが、どうせ一緒には住まないでしょうから…」

そういう理由で伯母の所に預けられたのだから…

「なるほど。 早速手配しよう
今日は割り振った部屋に行ってくれ
部屋のナンバーは君のカードの下五桁だ。 葛城一尉に聞けば解るだろう」

「了解です」

部屋を出る際も何も言わなかったゲンドウに、多少なりとも残念だった






『セイジ君。 準備は良いかしら?』

リツコが業務的な声で尋ねてくる

「はい。 初号機の方は絶対に失敗できませんからね…
いつでもどうぞ」

『それでは、初号機での起動テストに入ります』

『第一次接続開始』

『A10神経接続異常なし
初期コンタクト、全て問題無し
双方向回線開きます』

起動に必要な手続きを何の問題もなく終え、初号機の起動が終わる

『問題無しね。 引き続き連動試験に入るわ
その後零号機での起動テストをするけど、出来る?』

「…そうですね、連動試験だけパスできませんか?
ちょっと零号機とのシンクロは自信がないんで…」

『彼方らしくないわね…
いいわ。 零号機での起動テストに移ります
マヤ、初号機とのシンクロを終了させて』

プラグ内の映像が切れ、薄暗くなった。ただ、通信だけは繋がっていた

『…えぇ、LCLは排出しなくていいわ。 エントリープラグごと零号機に乗せて
セイジ君、暫くはそのまま待機して頂戴。 後5分程度よ』

「了解です…」

自分でも意識が薄くなっていくのを感じたが、それに抗うことはしなかった



『寝てしまったの? よくもまぁ5分で寝れること…』

リツコの呆れた様な声で目を覚ます

「…すみませんね。 たった5分であろうと貴重な睡眠時間なんですよ」

『睡眠不足でテスト? 自己管理くらいシッカリなさい』

何故か不機嫌なリツコだが、理由は多分、ゲンドウが自分に全てを話した事だろう

リツコは少なからずゲンドウに好意を寄せているように見えた

それが機密事項を自分の子供、ライバルの子供に告げてしまったのだからいい気分ではないだろう

リツコは、セイジがこの事を知っているのを知っているのかどうか…

「反論のしようがないですね。 兎に角、俺はこのままで十分いけますよ」

『そう? なら、零号機での起動テストを始めます』

『第一次接続開始
A10神経接続異常なし
初期コンタクト、全て問題無し
双方向回線開きます』

ふと誰かの気配を感じた

音でもなく、触れている物から伝わってくる振動でもなく…
訓練で身に付けた感じ方以外の感覚が感じ取った気配

生命に予め備わっている生きる為の本能とも言えなくもないが、この際は関係ない

兎に角、自分一人しかいない筈のエントリープラグ内で違う人間の気配を感じたのだ

(コアに関わる事なのか? …誰だ?)

アルビノ特有の白い肌を持つ赤い瞳の同年代の少女
この零号機のパイロット

(綾波、レイ…
いや、これはリリンか?)

様々な場面、様々な年齢のレイが入れ代わり立ち代りに出ては消えてゆく

その中で最後に行き着いたのは…






「…失敗したのか」

眼前には天井が広がり、部屋の中は薄暗い

多分病院のベットの上だろう

零号機とのシンクロは失敗だったようだ

多分レイが失敗させた時のように拘束を破壊し、周辺設備も破壊した事だろう

レイの時はエントリープラグが強制射出された

自分もそうだったのだろうか?

少なくとも両手両足は骨折などしていないが、起き上がろうとした体のいたる所が痛んだ

腕をみれば、何箇所か内出血を起こしている

(ま、レイが骨折してるの考えれば軽症か)

頭の下で手を組もうとした時、自分の頭に軽く包帯が巻かれている事に気が付いた

(頭から出血か…。 記憶喪失とかないよな?)

何か忘れている事があっても、自分で判断できないのだから自己診断は無理だと断定。取りあえず寝てしまう事にした



実験はやはり失敗したが、説明に来た技術部オペレーターのマヤの話によると、千分の一秒だけではあるがボーダーラインを突破したらしい

次回の実験では成功する可能性が高くなったと言われた

怪我の程度について主治医の先生から聞いた範囲では頭部からの出血のほかは打ち身

内出血以外外傷はなく、肋骨の一部にひびが入っているそうだが、少しで完治するそうだ

(使徒が来る前に完治してくれればいいが…)

この願いは見事に裏切られることになる…

言い訳みたいな後書き

皆様はじめまして。 幻魔狼です

こんな感じでこのサイトの処女作っす

普通は後で書く内容のモノだと思いますが、あえて最初に持って来ました

サブキャラ(予定ですが)の性格と現状を先に知った上で、一話を読んで欲しかったからです

キャラ紹介等を現時点では作っていません

メール等で「お前のキャラは良くわからん! キャラ紹介作れ!」等の励まし(?)があれば作ります。 はい

励まし、誤字、感想のメールがあったらここによろしくお願いします


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