双子の歩く道 Session 9

野外使用にしては精密部分が露出したエヴァサイズのスナイパーライフルを見て、シンジは不安を口に出す。

「………こんな野戦向きじゃなさそうな兵器、役に立つんですか?」

「仕方がないわよ、間に合わせなんだから」

リツコは身も蓋も無い返答を返してくる。

「…大丈夫、ですよね?」

「理論上はね……
 けど、銃身や加速器が保つかどうかは撃ってみなければ解らないわ
 ……こんな大出力で試射した事、一度も無いから…」

これが失敗なら後がないと言うのにもかかわらず、リツコはアッサリと言う。

「本作戦における各担当を伝達します」

仮設基地のライトの光を背に浴び、ミサトはシンジとレイに向けて言う。

「シンジ君は初号機で砲手を担当」

「はい」

「レイは零号機で防御を担当して」

「…はい」

「これはシンジ君と初号機の方がシンクロ率が高いからよ
 今回はより精度の高いオペレーションが必要なの
 陽電子は地球の自転、磁場、重力に影響を受け直進しません
 その誤差を修正するのを忘れないでね
 正確にコア一点のみを貫くのよ」

「え、そんな。 何も教わってないのに…」

シンジは、リツコの言った言葉には一度も聞き覚えが無かった。

「大丈夫よ。 貴方はテキスト通りにやって
 最後に真ん中のマークが揃ったらスイッチを押せばいいの
 あとは機械がやってくれるわ」

「はい…」

そういう説明は先に言って貰いたいものだ。

「それから、一度発射すると冷却や再充電、ヒューズの交換などで、次に撃てるまで時間がかかるから」

「もし外れて敵が撃ち返してきたら?」

「今は余計な事を考えないで
 一撃で撃破する事だけを考えなさい」

ミサトのキッパリした言い方がシンジにはピンチの現れの様に聞こえた。

(大ピンチって事か…)

シンジが現状を改めて確認した時、今まで黙っていたレイが静かに質問を口にした。

「私は…。 私は初号機を守ればいいのね?」

「えぇ、そうよ。 じゃ、二人とも着替えてきて」

「「はい」」



 

即席のロッカールームは二つも無いので、レイが着替えているのはブラインドを隔てただけの場所だ。

シンジは置かれている椅子に座り、隣を見てレイが着替え真っ最中だと知るやすぐさま顔を下に向ける。

目線の先には脱ぎ捨てられ、そのまま放置されている制服があった。

そこからも目線をそらし、レイについ先ほど思い浮かんだ可能性を口にする。

「これで…。 これで死ぬかも知れないね」

「…どうしてそう言う事、言うの?」

「……」

シンジには答えられなかった。

「あなたは死なないわ。 …私が守るもの…」

 


 

エヴァの搭乗用タラップの上でシンジとレイは座っている。

眼下にあった光点が少しずつ消えて行き、自分たちの周りの必要最低限な光を除き、全て消え去った。

「…ねぇ、綾波
 どうして、綾波はこれに乗るの?」

「…絆だから」

レイは座って前を見ながら静かに言う。

「絆?」

「そう、絆」

「…父さんとの?」

「皆との」

「強いんだな。 綾波は…」

「わたしには、他に何もないもの」

「他に何も無いって…」

レイはプラグスーツに付いている時計に目を落とし、そして立ち上がる。

「時間だわ、行きましょ。 じゃ、サヨナラ」

そう言ってエントリープラグに入ってしまう。

 


 

通信画面の向こうでは時報の音が一際大きな音を響かせる。

『時間です』

『シンジ君。 日本中のエネルギー、あなたに預けるわ』

「はい」

『ヤシマ作戦、スタート!』

『第一次接続開始』

『第一から第803区まで送電開始』

『電圧上昇、圧力限界へ』

『全冷却システム、出力最大』

『陽電子流入、順調です』

『第二次接続』

『加速器、運転開始』

『第三次接続、完了』

『全電力、ポジトロンライフルへ』

『最終安全装置、解除』

『撃鉄、起こせ』

日向の指示に従いスライドを引き、弾装室に、弾代わりのヒューズを入れる。

シンジの顔上部に照準合わせ用のモニターが降りてくる。

『地球時点誤差修正、プラス0.0009』

『電圧、発射点へ上昇中。あと10秒』

カウントダウンが始まる。

カウントが6秒にさしかかったとき、マヤから焦りの混じった報告がもたらされる。

『目標に高エネルギー反応!』

『なんですって!』

リツコが焦る。 ミサトはただタイミングを計る。

『発射!』

ミサトの号令に合わせシンジがスイッチを押す。

ライフルから陽電子が発射され、同時に使徒も加粒子砲を発射する。

二つのビームは互いに干渉し合い、互いの目的を果たせぬまま見当違いの場所に着弾する。

「ミスった!!」

衝撃波を食らいつつも撃鉄を引きヒューズを入れ替える。

『ヒューズ交換!再充填開始!』

『銃身冷却開始!』

ライフルの再充填が開始されるがその間に再び使徒側で高エネルギー反応が確認される。

『目標に再び高エネルギー反応!』

『マズイ!』

ミサトの絶望的な叫びと同時に使徒の第2射がエヴァより先に発射されてしまう。

『シンジ君!!』

「うわぁ!!」

身を焼くような痛み…は無い。

正面を見れば砲身の前でレイの零号機がSSTOの底を改修して造った盾を掲げ加粒子砲をさえぎってくれていた。

「綾波!!」

『盾が保たない!』

『まだなの!』

『あと10秒!』

「早く!」

1秒がとてつもなく長く感じられる。

零号機の持つ盾は端の方から飴の様に溶けている。

「早く!早く!!」

しかしそれで電圧が上がる訳でもなく、使徒の加粒子砲はついに盾をほぼ溶解させてしまった。

盾の無くなった零号機は自らの身を持って盾とする。

勿論、加粒子砲は容赦なく零号機を融解していく。

『零号機のシンクロカット急いで!!
 第2射までの残り時間は!?』

『残り5秒・・・4・・・3・・・2・・・1・・・・0!!いけます!!』

機体を零号機の横へ出し、ロックをしている事をすぐさま確認しトリガーを引く。

『よっしゃぁぁぁ!!』

ミサトの声が聞こえるがそれに構わず零号機へと歩み寄る。

「綾波っ!!」

首の後ろ側に当たる装甲を剥ぎ取るとエントリープラグが半分出てきて、LCLが排出される。

そのエントリープラグを抜き、なるべく慎重に地面へ置く。

自分はエントリープラグから出て、地面に置いたエントリープラグへ走り寄る。

加熱したハッチを無理矢理に開ける。

火傷をしなかったのはプラグスーツのおかげだが、それに思い当たる事はない。

今はただレイの安否を確認したかった。

「綾波!!大丈夫!?綾波!」

ハッチから入り、シートを見ると、そこにはぐったりとしたレイがいた。

レイはゆっくりとだがこちらに顔を向ける。

「…自分には、自分には他に何も無いなんて…
 …別れ際にさよならなんて悲しい事言うなよ」

そこまで言うと涙が零れ落ちそうになり、そんな顔を見られたくなかったので顔を伏せる。

「…ナゼ、泣いてるの?」

何も言えないでいるとレイが顔を少し横にそむけて言う。

「…ごめんなさい
 こういうときどうゆう顔したら良いかわからないの…」

その声に対しシンジは顔を上げ、言う。

「…笑えば良いと思うよ」

そう言って自分も笑う。レイもゆっくりと、そして優しく微笑んだ。


後書き

幻魔狼「って事で、全てはこのシーンのために」

セイジ「犠牲は俺か…?」

レイ「ふふふ…、問題ないわ。 シナリオさえ完遂されれば…」

シンジ「あ、アヤナミサン…?」

幻魔狼「ん〜。 ココと上での綾波サンのギャップが凄まじい…」

セイジ「綾波レイ・裏ver ってか?」

シンジ「う、裏って…」

レイ「シンジ君に変な事吹き込まないで…」←シンジに見えない位置でサイレンサー付きの銃を構える

幻魔狼「あ、アハハ(滝汗) そ、そうだ、裏と言えばセイジ君だよね、やっぱり」

セイジ「…まぁ、幻魔狼の趣味に付き合ってるうちにそう言う設定になってるな」

幻魔狼「そうそう、何時の間にか特殊部隊顔負けの一流諜報部員だしね?」

セイジ「…バラしていい内容なのか、それは?」

幻魔狼「その方が導入しやすいし、いいかもね?」

シンジ「『ね?』って、どうして疑問系なのさ?」

幻魔狼「そりゃぁ、俺自身の判断と読者様の考えがイコールであるかなんてわからないからだよ」

セイジ「らしくない、マトモな台詞を…」

シンジ「天変地異でも起きるのかな?」

レイ「取って付けた理由ね…」

幻魔狼「…………そんなに日頃の行い悪いのか? 俺」

リツコ「更新しない作者はイラナイわ。 だからコワスの、憎いから…」

セイジ「ま、マッド・赤木……」

リツコ「ふふふ…、後悔しても遅いわよ、碇セイジ君?」←原色の色鮮やかな液体の入った注射器を両手に笑う

幻魔狼「あぁ、南無南無…」←戦略的撤退

レイ「触らぬ神にたたりなしよ、行きましょう」←シンジを引き摺って撤退

シンジ「せ、セイジ…」←結局セイジは助けない

セイジ「おんどる裏切ったんれすか!!」←某仮面ライダーより…

リツコ「はいはい、幻覚見るのはまだ早いわよ…」

セイジ「幻覚見せるような薬なのかよ!? っう?!」←注射を打たれる