双子の歩く道 Session 17

「くそぅ、何でこんなに雨が降ってるんだ…。」

昇降口で、外の雨を見て無意味に嘆いているセイジに苦笑を返し、どうやって帰ろうかと考える。

「おぉ。 センセ方も帰りか?」

トウジに声を掛けられる。振り返れば、トウジの後ろにはケンスケもいた。

軽く挨拶した時、セイジが口を開く。

「おう。 しかしこの雨だからな…
 誰か傘とか持ってない?」

セイジの質問には、沈黙が答えた。

「…あ、そう。
 頑張って歩いて帰るか…。
 トウジたちはどうすんの?
 家に直接帰らないで家で雨宿りしてってもいいけど…。
 構わないよね? 兄貴は。」

急に話を振られ、生返事しただけだったが、セイジはそれで満足だったようだ。

「じゃ、行きますか。」

雨の中、四人は歩き出した。

 


 

「「ただいま。」」「「お邪魔します。」」

セイジがタオルを取りに行ったのを玄関で見送って、濡れた鞄をはたいた。

セイジは直ぐに戻って来た。

「で、服も乾かしていくか?」

濡れた制服を指してセイジが尋ねる。

「せやなぁ、ええんならやってもろうてもええか?」

「ちょっと図々しいけど、頼める?」

「じゃ、上がって。」

ぞろぞろと上がって脱衣所に。

セイジは着替えを取ってくると言って部屋に行ったので、シンジも自分の着替えを取ってくる。

全員が着替えると、家の中で1番広いセイジの部屋に集まる。

トウジ、ケンスケはセイジが貸した洋服を着て、シンジとセイジは寝間着姿だ。

制服は全員分を乾燥させている。

ただ待つのも暇なので、全員で昔話をすることになった。

メインはケンスケのミリタリーな話しなのだが。

「俺ばっか話しててもつまんないだろ?
 セイジとか、なんか話しないの?」

「あるにはあるが…
 楽しくない話ししかないぞ?」

「それでもいいって。
 アメリカに行ってた時の事なんか聞いたことないし、な?」

ケンスケがトウジとシンジに同意を求め、二人も頷く。

諦めにも似た表情で、前置きも無しにセイジが話し始める。

「あれは…、アメリカの大学の2年生の時だ。
 俺が13歳、相手が18歳。 5歳差だがつきあっててな。
 …こんな雨日だった。

 彼女と俺が学校で起こった事件に巻き込まれてな。
 その時俺はナイフ一本っていう丸腰同然の状態で、相手は銃で武装してたんだ。
 で、俺は運悪く彼女と一緒に犯人の人質になったんだよ。
 そうだなぁ…大体1時間ぐらい経ってから犯人と警察の方で交渉が決裂してな。
 『人質を殺す』って宣言してて、見せしめに俺を殺そうとしたのさ。
 腕を縄で縛られてたんだが、持参してたナイフでそれを切って、反撃してな。
 頚動脈を切り裂いたんだが、それで即死って訳じゃない。
 残った力を使って撃った銃弾は、俺を貫通して一緒に彼女にも当たったんだ。
 …それだけならまだ自分の身から出た錆びだから、納得のしようがあるんだがな。

 この話しにはまだ続きがある。
 俺は弾が貫通していたお陰で怪我自体は大したもんじゃなかったんだが、彼女は貫通後の潰れた弾頭を喰らってた。
 当たり所もよくなくてな、手当てが早かったにもかかわらず病院で死んだよ。
 それからここ暫らくはラブレターやらなんやらも全部処分してるって話し。
 …これ位しか話せるネタがないんでな、勘弁してくれ。」

一気に言ってから、セイジは場の空気が嫌になったようだ。

「まぁ、昔の話しさ。」

そう言ってもどうにもならない重い空気を追い出すように、扉を開ける。

「セイジ…」

声を掛けてきたのはアスカだった。

何時の間に来たのかと思ったが、何時もミサトの所から逃げてきているので、居る事自体はおかしくなかった。

「立ち聞きはよくないな。 で、どこから聞いてた?」

「え、その…。 相手が18歳で5歳差ってとこら辺から…。」

「じゃ、ほとんど聞いてたんだ。
 …ま、他の人に言わなければいいよ。
 あぁ、終わってるじゃんか。 トウジ、ケンスケ、来いよ。」

なんとも言えない表情のアスカの脇を抜けて、洗濯機から制服を取り出すと、二人に投げ渡し、自分は脱衣所から出て、トウジとケンスケが入るとカーテンを閉める。

シンジには手渡しで渡し、自分の分は傍にあった椅子に掛けると、ポリポリと頭を掻いた。

「ちょっと重い話をしすぎたな。」

苦笑しつつ、どこかスッキリとした様子で言うセイジの視線の先にはアスカがいた。

アスカもシンジも何も言えないでいると、チャイムが鳴った。

「はいは〜い。 チョッチお邪魔するわよ〜。」

と言ってミサトが家に入ってきた。

「どうしたんですか?」

「チルドレンは今夜はハーモニクステストあるから。
 忘れないでねって言いに来たのよ。」

「…ついでに飯でもたかりに来たんですか?
 今は何も作ってないから、もう少し待ってくださいね。」

冷蔵庫と向かい合って、何を作るか検討しているセイジに、先程までの暗さはない。

ミサトはミサトで、、椅子に座るって割り箸を割っている。

シンジは部屋で制服に着替えようと部屋に向かう。

アスカはミサトと一緒に席に着いたようだ。

シンジも直ぐに着替えると、椅子に座る。

ミサトは出来上がったばかりのチャーハンを受け取り、食べ始めていた。

そこに、丁度着替え終わったトウジとケンスケが脱衣所から出てきた。

「セイジ〜、俺ティッシュ入れっぱなしで乾燥させちまったよ…。」

「乾燥だったら大丈夫なんじゃないの?」

「確かに大丈夫なんだが…。
 水を含んだ後で乾燥させると、塊になるらしい。
 初めて知ったよ。」

「…さよか。 ま、ドンマイ。」

そんな会話を苦笑交じりに食事を進めて聞いていたミサトに、ケンスケが目を留める。

…いや、正確に言えば、ミサトの付けている襟章に目を留めた。

「おぉぉ!
 こ、このたびはご昇進。 おめでとうございます!!」

ケンスケが勢い良く頭を下げると、トウジも訳が解らないという表情ながらも頭を下げる。

シンジも聞かされてはいなかったが、「ありがとう」と言っているミサトは嬉しそうではないように見えた。

「…そうだな、皆でパーティーでもやるか?」

セイジがそう呟いたのを聞きつけたケンスケが、自分が幹事をすると言い出し、一人ハイになりながら家を出て行った。

トウジはそれを追って外に出る。

しかしすぐに戻ってきてこう言ったのだった。

「悪いんやけど。 傘、貸してくれへん?」

 

 

(何だか予想以上に張り切ってるな…。ケンスケ。)

ケンスケが持って来たホットプレートを家にあったホットプレートとあわせ、ちゃぶ台を、もう一つ引っ張ってきたちゃぶ台を二つ並べた上に並べてある。

焼肉をやるそうだ…。

今回は、使徒の殲滅祝賀パーティーと、ミサトの昇進祝いを合同で行うとの事だ。

本来ならばミサトの昇進を確認した時、即座にパーティーを開きたかったのだが、いろいろと各自の用事がかぶり今に至るまで開催できなかったのだ。

ケンスケの心遣いはある意味細やかで、座席も決定してある。

まずは上座にミサト、その左右に、シンジ、ケンスケ。

シンジの隣にレイ、セイジ、アスカ。

ケンスケの隣にトウジ、ヒカリ。

ペンペンは、現在位置としては、何もせずに座っているアスカの膝の上である。

ちなみにセイジは、ペンペンがミサトの膝の上でそうしてくつろいでいるのを見た事はない。

ヒカリが来てミサトに花束を渡し、メンツがそろったので始める事になった。

「それでは〜。
 ミサトさんの昇進を祝って〜〜。

  かんぱ〜い!」

ケンスケの号令に従って、皆で復唱する。

「「「「「「乾杯!!」」」」」」「クェ!」

肉を焼き、野菜を焼き、ミサト用のビールを頂戴して飲んでみたり、そんなこんなで時間が過ぎていく…。

チャイムが鳴り、来客の到来を告げてきた。

入ってきた人物は二人だった。

「本部から直なんでね。 そこでいっしょになったんだ。」

「「怪しいわねぇ〜〜。」」

飄々と言ってのける加持にミサト、アスカが声をそろえて言った。

隣にいるのはリツコだ。ミサトの隣の席を空け、そこに二人を座らせる。

「あら、やきもち?」

リツコがからかい半分な表情のまま、遠回りに二人の言葉を否定する。

「そんなわけないでしょ?」

「いやこの度はおめでとうございます、葛城三佐。
 これからはタメ口、聞けなくなったな。」

「何言ってんのよ、バーカ。」

畏まった態度で挨拶をして、即座に元の調子に戻る加持に、ミサトが突っ込みを入れた。

「しかし、司令と副司令が揃って日本を離れるなん…」

加持のセリフは、これ以上言わせると厄介な事を起こしかけないと思い、言葉を遮る。

「加持さん、この場で職場話は無しでしょ。
 話のわかりようのない人もいるんだから。」

そして、更に周りに聞こえないよう、耳打ちする。

「今度、リツコさんにも俺の考えてる事を明かそうと思うんだ。
 加持さんも居てくれるとありがたいんですが…。
 セッティング、任せていいですか?」

加持が頷くのを見て、宴会に戻っていく…。

 

 
 

使徒の出現を告げられたのは、セイジが新兵器の完成品を見るためにNERVに入ったときだ。

新兵器を目に収め、スペックシートを受け取り、プラグスーツに着替えてから作戦本部に出向いた。

「遅かったわね、アレ。 見て来たの?」

そう言ったのはミサトだ。

頷いて答える。

「じゃ、全員そろった所でもう一回説明しましょう。
 今回、目標は衛生軌道上に出現。
 自らの体組織の一部を落下させ、地表を攻撃してきたわ。
 とりあえず初弾は太平洋上に大外れだったけど、数発落としてきて、学習してるようね。
 次は間違いなくここに来るわ。 本体ごと、ね。
 
 これをエヴァで直接受け止めるわ。
 それに先立ってマギに落下予想範囲を絞らさせて、エヴァ4機をそれぞれに担当を与えて振り分けたわ。」

ディスプレイに表示された予想範囲と配置図を合わせたマップを見ながら言う。

「この配置の根拠は?」

「勘よ。 オンナの勘。」

「…ミサトさん。
 ちょっと異議申し立てしていいですか?」

許可を与えられる前にキーボードを叩き、配置を変える。

「一応ミサトさんの当てにならない勘も配慮に要れてこうしましょうよ。
 俺が新兵器を引っさげて真中に陣取り、他の3機はミサトさんの勘による配置を継承したまま、3機だけで全ての範囲をカバーできる配置です…。
 どうです?」

少し思案を入れてからミサトが頷く。

「これが終わったらミサトが何でも奢ってくれるってさ。
 それと、新兵器ってなに?」

アスカが聞いてきた。

ミサトは確か給料日前だよなと思いつつアスカの質問に答える。

「ま、簡単にいうと刀、日本刀さ。
 俺は伯母さんに剣術仕込まれててね。
 それを生かそうって訳さ。」

「じゃぁ、その手にある分厚い紙はナニ?」

アスカは持ったままだったスペックシートを指して言う。

「ん? あぁ、刀にリツコさんが細工したらしいから、それの説明書きだよ。」

「へぇ〜。 私にも使えるかな?」

「ま、今度使わさせてもらえよ。
 ただし、一本しかないから折れたら代え、ないからね。
 ちなみに日本刀は使い方が悪いとすぐ折れるけど…。」

「えぇ〜!? じゃぁいいや。」

「よし、では配置についてもらうわ。 頑張ってね。」

ミサトに見送られてエヴァに乗るために、ケイジへ向かう。

途中、シンジがアスカに質問を投げかける。

「アスカは、なんでエヴァに乗ってるんの?」

「あんたバカ? 決まってんじゃない。
 自分の才能を世の中に示すためよ。 どうして?」

「やっぱり、皆決めてるんだ…。」

「そう言うあんたはどうなのよ?」

「解らない。 だから皆に聞いてるんだ。」

「じゃ、二人には聞いたんだ?」

「うん。 セイジは聞かなくても大体わかるしね。」

 


 

『目標は光学観測による弾道計算しかできないわ。
 よって、MAGIが距離10000まで誘導します。
 その後は、各自の判断で行動して。
 あなたたちに全てまかせるわ。』

『使徒接近、距離20000!』

『では、作戦開始。
 外部電源パージ!』

他の三機は走らねばならないが、セイジの参号機は予想範囲の中心に居るので、まだどちらに向かうかすら決まっていない。光学観測による弾道計算に頼っていれば間に合わないとセイジは判断している。

目を閉じてみる。

そして自分の感覚を、エヴァのそれになぞらえてみる。

自分の感覚が鋭敏になってゆく反面、ミサト達NERV職員の声は聞こえなくなってゆく…。

自身の目を閉じたまま、エヴァの感覚としての目を開けてみる。

…見えた。

今まで、エントリープラグ内で見ていたときよりも、小さい物まで見えるような気がする。

エヴァの周りを囲う拘束具を通して、周りの状態が肌から伝わってくる。

ふと上空を見上げれば、赤い点が、それよりも少し薄い色の尾を引きながら、少しずつ大きく見えている。

アレが使徒だとすれば、尾が見える。すなわち真下に居ないと、いう事だ。

尾が見えないくらいの位置へ移動した時に、そこは少し盛り上がった丘のような所だった。

そして、赤い点だった使徒は、今や参号機の立つ丘すらはるかに凌駕する大きさをしていた。

少し離れたところにエヴァクラスのモノが近づいて来ているようだ。

左手に持った刀の鞘を、腰に引き付ける。右手で柄を握り、水平に凪ぐ要領で、上空へ抜刀の一撃を放とうとする。

本来ならば距離は刀の有効範囲外であり、音速を軽く越える刀身が放つソニックウェーブも、A・Tフィールドにすら届かない距離だ。ただの刀ならば攻撃の有効範囲にでは無い。

しかし、リツコの細工がそれを可能としていた。

刀身内部に、エヴァのA・Tフィールドを巡らせ、抜刀により一定の指向性を得た波動として通常よりもはるかに遠距離に、実際に切る時よりもより切れ味良く攻撃できるそうだ。

使徒はまだ間合いに入っては居ない…、と、いうよりはA・Tフィールドがどれほどの飛距離があるのか未知数なのだ。

実際の刀の間合いギリギリで放つのが妥当だろう。

思考を巡らせているうちに使徒は大きくなっており、いつのまにか隣に初号機が並んでいた。

初号機がA・Tフィールドを展開したのか、上空に何か硬い物が張られたような感覚がある。

使徒と初号機のA・Tフィールドが互いに反発しあう。

まさにその瞬間に使徒が間合いに踏み込んできていた。

刀を抜き放ちながら力を、腕から刀の柄、それを介して刀身の先端まで行き渡らせ…。

 
刀身が纏った力を解き放つ。
 
手ごたえは軽く、薄紙を切るようだったが、間違いなく使徒を切り、それはコアにまで及んだ。

これで使徒事態は殲滅できた。

だが問題がある。

今までの経験からして爆発するのは目に見えている。

振り切った刀を間髪入れず振るい、重力に従い圧し掛かって来る使徒を切り刻む。

なるべくコアから周りの物質を切り離すように切り離すのだ。

爆発する元から爆発物を少しでも取り除けば爆発自体は小さくなる…、ハズだ。

一通り解体が済んだその瞬間に使徒が爆発する。

思惑通り、爆発は小さく。

地表に与えるダメージは最小限に抑えられたようだ。

どうにか、芦ノ湖を増産せずに済んだようである。

集中を解くと、自分がかなり消耗しているのに気付いたセイジだった。

 
 

後書き

 
 

【幻魔狼】…絶不調

【セイジ】ん?何時も通りのワンマンアーミーっぷりじゃないか?

【アスカ】そうそう、私達なんかいなくても十分殲滅できてたし

【幻魔狼】違う、セイジの暗躍ぶりを書けてない

【レイ】加持さんに怪しい話しを持ちかけていたわ

【幻魔狼】その裏までは書いてないっしょ?

【セイジ】まぁ、お前じゃ書ききれないだろ

【幻魔狼】だまらっしゃい! で、番外編だそうかどうか考え中

【レイ】謎は解くべきよ

【アスカ】そうそう、変に隠されててもムカつくだけだし

【シンジ】気にならない訳じゃないけど… できるの?

【幻魔狼】…いいだろう、やってやる、やってやるぞぉぉ!!

【セイジ】自分が書きたいだけだろうが…