双子の歩く道 Session 16

セイジは、今まで着ていた初号機用のパイロットスーツから、参号機用のパイロットスーツに今更ながら切り替わることになり、それの試着をさせられた。

その後は、チルドレン全員で行う機動試験まではフリーであり、暇だったので発令所に行く事にした。

…のだが、後扉一つで発令所というところで、見事に真っ暗になってしまった。

「停電? 早歩きしてればなぁ…」

扉の開閉モードを手動に切り替えるため暗闇をまさぐる事になった…。


学校からNERVへ行くために歩き、ゲートに着いた。

アスカがカードをスリットを通し、ゲートを開けようとするのだが…。

「何で開かないのよ!?」

何度カードを通しても開く兆しが無い。

「ちょっとシンジ。
 アンタので試しなさいよ。」

言われて、アスカの試したゲートとは別のゲートで通すのだが…。

「あれ? ダメだ…。
 レイのは?」

レイも試すがやはり開かない。

「もぅ!
 壊れてんじゃないの?コレ!」

叫ぶアスカ。

しかしゲートをよく見ると…

いつもなら“LOCK”と表示されている部分に光が点いていないのに気付いた。

「ねぇ、アスカ。
 いつもならここって光ってたよね。」

「…そうね。 確かにアンタの言う通りだわ。
 で? 緊急時はどうするんだっけ?」

そう言ってレイを見るアスカ。

レイはなにやら鞄から取り出して読んでいた。

「え? なにそれ?」

「あんたバカ? 緊急時用のマニュアルよ。
 私、出すの面倒だから何にもしてないの。
 …で、どうなの?」

命令口調で聞くアスカにレイはこの状況にも何の代わりも無く無表情に言う。

「とにかく発令所に行きましょう。」

「で、どう行くの?」

「…コッチよ。」

スタスタと歩いていってしまうレイを追いかける。

「さすが古株。 こういうときに便利ね〜。」

腕を頭の後ろで組み、心底そう思っていると聞こえるように言うアスカ。

その時、シンジの持っている携帯が鳴る。

…と言ってもマナーモードにしてあるので振動するだけだが。

「あ、セイジだ。」

携帯に出て、アスカの驚いたような顔を見る。

「どうしたの?」

コレはアスカ、セイジに向けて言った言葉だ。

「何でアンタの携帯こんな所で使えんの?」

『おぉ! 繋がった。
 流石リツコさんだ。』

「セイジ、ちょっとだけ待ってて。」

『ん? いいけど。
 早くね。』

セイジに聞こえないようにマイクを手で塞ぎ、アスカに答える。

「セイジの勧めで携帯を改造したんだよ。
 今じゃ衛星電話になってるんだ。
 普通の受信範囲よりも2倍は範囲が広いんだってさ。
 リツコさんが改造してくれたんだよ。」

「へぇ〜。 私もやってもらお〜っと。」

会話の相手をアスカからセイジに戻す。

「お待たせ。 で、なに?」

『あぁ。
 レイに言えばわかると思うんだけれども、D‐03のゲート方面に向かって行ってくれ。
 俺が発令所側から扉を開けてくからさ。
 後、扉を開けたらちゃんと閉めてね。

 変な人が入り込んでたらヤバイから。』

「わかったよ。 D-03だね?」

『そーゆう事。
 頑張って手動で扉を開けてくれ、俺も頑張るから。
  じゃ…』

セイジとの通話を終えて、セイジからの伝言をレイに伝える。

「セイジがD-03ゲート方面に向かって行ってくれって。
 セイジが発令所からの道の扉を開けて来てくれるってさ。」

「そう。 D-03…、コッチ。」

分かれ道を迷い無く進んでいく。

しかし、レイの歩みが止まる。

前を見れば、ゲートがグチャグチャに熔け、固まっていた。

コレは開きそうに無い。

「で? コレはどうすんの?
 別の道は?」

アスカがレイの回答を急かすように言う。

「…少し戻りましょ。 他の道があるわ。」

「そ。
 ちなみにそのD-30ってゲートには何通りの行き方があんの?」

「……少なくとも10通りあるわ。
 ここのゲートの中では1番他との連絡方法が多い。」

「はぁ〜、流石はセイジね。
 非常時のことも考えてるわ。
 …この無知の兄貴とは大違いね。」

悔しいがアスカの嫌味に言い返す言葉がない。

シンジ自身、セイジの有能さはわかっているし、すごいとも思う。

だが、兄弟だと言われ、比較されたくはない。

レイがまたしても歩みを止める。

今度は扉を開けろ、という事らしい。

アスカはやらないという顔つきをしている。

苦労して開けると、その先にライトの光が見えた。

「お! 来た来た。
 どうやら最短ルートは塞がってたみた…」

「ねぇ、これってどうなってんの?
 ココの電力供給ってこんなにもろいの?」

セイジの顔を見つけるや、アスカは叩きつけるように質問する。

「いや。
 正・副・予備の3系統で、その全てが同時に落ちるのはまず有り得ない。
 …人為的にブレーカーが落とされたと思うべきだろうな…。」

「それって、どうゆう事?」

素直にわからない部分を聞いてみる。セイジは苦笑しながら答える。

「NERVには使徒以外の敵も居るって事。
 ま、このタイミングで使徒が出てこない限り大丈夫なんだ…」

そこまで言うと、不意にセイジが動きを止める。

どうしたのか聞こうとすると、セイジが口に人差し指を当てて言う。

「静かに。 何か聞こえる…。」

言われて、耳を澄ませてみる。

『………使徒…近中…………の出撃を………。
 …現在、使徒接近中!エヴァンゲリオンの出撃をこう。』

「だそうだ。 早く行くぞ!」

セイジが駆け出す。 それにアスカ、レイと続いていく。

シンジはとっさに反応できなかった。

しかしセイジが戻ってくると言う。

「扉は俺が閉めるから。 早く発令所まで行って。」

言われるがままに、レイ、アスカを追う。


「来たわね。
 レイとアスカはもう着替えに行ったわ。 貴方達も早く行ってきて。」

シンジと共に発令所に着いて、最初に対面したリツコが発した一言だ。

既にアスカとレイはプラグスーツに着替えるためなのか、更衣室に向かう後姿が見えた。

「エヴァはどうなんですか?」

これはシンジ。

セイジ自身は、先ほど発令所にいたが、その時には使徒襲来の報はまだ届いていないので、準備が出来ているのかどうかは知らない。

「スタンバイできてるわ。」

「電気もないのに?」

「人力でね。 碇指令の発案よ。」

「父さんの…。」

後ろを仰ぎ見た二人の視線の先には、技術部の面々と協力してエントリープラグのハッチを開けているゲンドウの姿があった。

セイジはすぐに興味を失い、放って置けばいつまでもそうしていそうなシンジに声をかける。

「さて、俺達も着替えてこようぜ。」

「そうだね、急ごう。」


『うぅ〜〜。 カッコ悪い〜〜…。』

アスカのボヤキが通信にのって聞こえてくる。

確かにいつものエヴァの行動から考えて、これは地味な部類に入るだろう。

なにせ狭い通路――エヴァにとってだが――を匍匐前進で進んでいるのだ。

この後に、上昇用通路を這い上がる行程も待っている。

「しょうがないだろ?
 いつもはエヴァサイズの物なんて通らない通路なんだから。」

参号機、弐号機、初号機、零号機の順で進んでいる。

2機並んで進行できないので1機ずつだ。

零、参号機はパレットライフルを装備している。

これはセイジ、レイの射撃能力が他の二人よりも高いためで、ライフルが二つしか使用可能でなかった為の処置だ。

進むうちに上昇用通路に差し掛かる。

両手両足を使い少しずつよじ登る。ちなみに零、参号機は片手を使えない。

『またしてもカッコ悪〜い。』

アスカのボヤキが耳に入るが、今度は無視し、ただただ登っていく。

不意に腕の辺りに何かが落ちてきた。

それは参号機の装甲を溶解させていた…

「全機回避!!」

言っても無理なのはわかっているが言うだけ言う。

少し下に見えるシャッターの閉まっている横道にライフル弾を打ち込み、蹴り開けて飛び込む。

アスカがその横道に這い上がろうとするのを手伝う。

引き揚げ終わるのとほぼ同時に、上から溶解液が流れ落ちてきた。一応弐号機は無傷のようだ。

「兄貴、大丈夫か!?」

シンジの様子を聞いてみる。

『うん、何とかね。
 でも、レイが液体を少し被って、しかもライフルを落としちゃったんだ…。』

「そうか…。
 俺はまだライフルあるけど、弾は3割使っちまった。」

あまり状況がよろしくはないが、この状態でベストを尽くすしかない。

『それで、案はあるんでしょうね?』

アスカの問に、即答はしかねた。

「ある。
 …しかし使徒の情報が少ないから完璧とは言えない。
 それでもやるか?」

『当たり前でしょ?』 『うん。』 『…ええ。』

異口同音に賛成するのを確認して、案を話す。

「それでは…。
 まずは目標にA・Tフィールドを解除させなければならない。
 これは使徒の攻撃と思われる溶解液の発射直後を狙う事でクリアする。
 それに先立って、目標に対して陽動を行い、この条件を満たす。

 陽動の方法は、現在、弐、参号機がいる側道からの降下による目標射線軸上への移動。
 そのまま横道に戻るのでは行動が遅くなるため垂直降下する。
 降下後は、零、初号機のいる側道へ退避する。
 …ちなみに落としたライフルは確認できるか?」

『できるわ。 破損はなし…。』

「ん、じゃぁ二段に構えよう。
 零、初号機で、降下してきた機体を回収し、攻撃を回避した後、3機のうちの1機がライフルを回収。
 もう1機が回収したライフルを使用する。
 で、残りの1機は目標の攻撃が早かった場合の盾となるために、射撃をする機体の上方に展開する。
 …質問は?」

『私とセイジ。 どっちが降りるの?』

「勿論俺が降りる。 射撃は頼んだ。
 次に二段構えの方だが、回収はどちらが向かうんだ?」

『レイが行きなよ。 攻撃受けたんだろ?』

『…わかったわ。』

「射撃は兄貴がやりな。 俺は盾になろう。」

『そんな…』

「どうせそこまで降りて行って、そこの通路を塞いじまうんだ。
 レイがキャッチしてくれ。
 そうすれば、俺が展開した後、レイが降下してライフルを回収。
 その間に兄貴は展開してライフルをキャッチ。
 俺がどいたらライフル発射。 これでいいな?」

『OK。』 『わかった。』 『了解。』

アスカにライフルを渡し、深呼吸する。

「Are you ready?」

『Yes。』 『OK。』 『…』

軽く冗談を言ったつもりだが、場を和ます事は出来なかったようだ。

「…日本語にしとこうか…。
 準備は良いか?」

『良いって言ってるでしょ!』 『大丈夫。』 『いいわ。』

「よし、行くぞ!!」

通路に身を躍らせる。

その時に下を見て退避ポイントを確認し、手足で軽くブレーキを掛けつつ降下していく。

視線は頭上に向けて固定して、いつでも回避をできるように準備をしておく。

その視野に、落ちてくる物が捕らえられた。

「おいでなすった!」

上に向けていた視線を下に戻すと、まだ退避ポイントに達していなかったため、ブレーキ代わりにしていた手足をどけて、自由落下。

手を差し出してくる零号機のモノアイの高さで両足で壁面に踏み込みスピードを減らし、零号機の腕に掴まり、引き揚げて貰う。

少しだけ見えた背後では溶解液が落ちてきていた。

『これでも喰らえぇ!』

およそ少女の言うべきでないセリフと銃声が聞こえる。

体勢を立て直すと即座に展開し、零号機に道を空ける。

顔を背後に向けると、弐号機の赤いカラーリングとマズルフラッシュ――銃の発射時の閃光――が見えた。

零号機は即座に降下、ライフルを回収する。

ほぼ同時に初号機が展開し終わり、零号機からライフルを受け取る。

『弾切れ! 引っ込むわよ。』

アスカからの通信。

それを聞く寸前に視界の端で弐号機は側道に退避していた。

溶解液の攻撃がないのを半瞬で確認して、初号機の斜線軸上からどきながらシンジにこう言う。

「撃て!!」

シンジがライフルを撃ち尽くす間、溶解液は落ちてこなかった。

『弾切れだよ。 これでダメなら直接攻撃しかないよね…。』

『心配いらないみたいよ?
 上の方で動くそぶりないもん。』

シンジの言葉に、アスカが答えた。

安心するのは早すぎる。

「アスカ、一応登って確認してくれないか?
 まだ殲滅できていないかもしれないから、気を付けて…。」

『そうね。 ちょっと待ってて…。』

暫くの間があってアスカから使徒の殲滅完了が告げられる…。

セイジは今まで起動していた記録用ソフトを停止し、ファイルに保存しておく。

これはミサトへ使徒の情報を提供し、リツコにエヴァの改良点を見つけさせるための材料である。

(ミサトさんより上手い作戦だったらどうしようか?
 作戦部長のポスト頂いちゃうか?)

無駄な事を考えつつも稼動可能時間内にエヴァのケイジに戻るために、来た道を戻ることにする…。


――あとがき――

【幻魔狼】はい、無事に殲滅完了ですよ〜

【セイジ】…よくもまぁ、あんな狭い穴の中で戦闘したなぁ

【シンジ】自分達でやっておいてそれはないと思うけど…

【アスカ】それより、なんなのよあの異次元携帯は!?

【レイ】…ご都合主義 (ボソ

【幻魔狼】はい、その通り

【アスカ】あ、アンタ達ねぇ…

【セイジ】あぁ、そこで切れたら負けなんだから…  ほら? ←強引にお姫様抱っこ実行

【アスカ】ちょ、セイジ?

【セイジ】…最近後書きがこんなんばっかりな気がするな… ←とか言いながらフェイドアウト

【レイ】問題ないわ、碇君は私の物だもの…

【幻魔狼】だからさ、碇姓は三人いるって

【レイ】私にとっては一人だけ

【幻魔狼】あぁ、左様で…

【シンジ】……?

【幻魔狼】…鈍いな、オマエ

【シンジ】……え?