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双子の歩く道 Session 15

シンジ、セイジ、アスカは、作戦司令部に来ていた。

今回の作戦でのセイジ、アスカの独断行動についてである。

シンジはミサトの指示に従っていたのだが、同じパイロットとしてこの場にいた。

「今回、使徒の殲滅には成功したけれど、もしあそこで負けてたらどうするつもりだったの?」

「俺に言ってる?
 アスカに言ってる?」

「両方よ。
 ただし、セイジ君の場合は私の撤退支援の命令を勝手に戦闘再開に摩り替えた事についてね。」

「俺のの場合、あそこでミサトさんの指示を仰いでいれば、使徒にイニチアシブを与える事になって、以降の撤退作業が滞ると判断したんです。
言わせてもらえば、接近戦闘時はパイロットの判断で動くのが良いのは言わずと知れている事でしょ?」

「それについて、あなたの判断は正しかったわ。でも、何故アスカの撤退を促す発言をしなかったの?」

「それについては全面的に俺のミスです。
 すみませんでした。」

堂々とした態度で言い放つセイジに、ミサトはしょうがないといった表情になる。

「そう、それで。 アスカは?」

「…すみませんでした。」

「二人とも、今後はこのような行動は慎むように、これはシンジ君もよ。」

「「「はい。」」」

「それとアスカ。 これ以後あなたは私の家で暮らして貰うから。」

「えぇぇぇ〜!」

「これは命令。 勝手に動いた罰よ。
 この程度で済むんだから感謝なさい。」

「…だったら暫く監禁された方がマシよ…。」

そばにいるシンジでさえ聞き取りにくかった呟きは、ミサトには届いていなかった。


家にはなぜかアスカがいた。 理由はこうだ。

『アンタも見た事あるんでしょ?  あんなトコでくつろげると思う?』

だ、そうだ。

自分の部屋に居ればいいじゃないか、とも思うが、わざわざアスカの怒りに触れる必要もないと思い、口に出してはいない。

子供4人で机を囲み、飲み物を飲んでいるのだが、セイジとアスカが話を振らなければ、シンジとレイは喋らない状態である。

「…そうそう、今度の修学旅行は沖縄でしょ?
 水着とか買いに行かなくっちゃね。
 加持さんが都合つかないらしいからセイジ付き合ってよ。」

「…修学旅行? 俺達チルドレンだろうが。
 人権なんて無いに等しいんだぜ?」

セイジがあまりにもアッサリと言うためにアスカの反応は目に見えて遅れた。

一拍おいてから椅子から立ち上がりざまに机に両手を叩きつける。

「…って事は何? 修学旅行に行っちゃダメって事!?」

「だろうな。
 ミサトさんに聞いてみな。 俺は聞いてないけど、大体予想はつく。
 な?」

同意を求められたので頷く。

隣のレイも同様に頷いた。

「ちょっと! 何であんた達はそうも簡単に納得できんの!?」

「だ、だってさ、予想つくでしょ?
 ミサトさんの言いそうな事は。」

アスカの勢いについしどろもどろになりつつも言う事だけ言う。

「…私は、どちらでも構わないわ。」

「へぇ? 狙いはシンジ? セイジ?」

レイの言葉にアスカは半ば悪意を持って言う。

「…どうしてそうゆうこと言うの?」

「だって、どうにもセイジ達のいる所ならどこでもいいみたいな感じがしたから。
 好きなのかなってね。」

レイの憮然とも受け取れる無感情な言い方に、アスカは尻篭りに答えた。

「そう…。」

レイはそれだけ言うと、席を立つ。

「どうでもいいけど、ミサトさんに確認しに行かなくていいの?」

セイジのその言葉に、アスカは席を立つと、隣のセイジの服の襟を掴み、半ば引きずるようにしてミサトに会うため、家に戻っていった。

(セイジ、御愁傷様…。
 あ!…僕は僕で片付けをやらされる羽目に…。
 綾波、いるなら手伝ってくれてもいいじゃないか…)

哀愁を漂わせながら食器を洗うシンジであった。


「アスカ! お土産買ってくるからね。」

「お──っ。 三人とも、残念だったな。」

「お前らの分まで楽しんできたるわ。」

空港までクラスメイトを見送りに行ったさいに、ヒカリ、ケンスケ、トウジはそれぞれこう言って行った。

隣で、アスカが叫びだしそうな自分を押し殺していたのが怖かったのは、シンジだけの秘密だ。


NERV内部にあるプールで泳ぐ事になった。

それに際し、セイジはミサト宅からペンペンを連れてきた。

先に着いていたシンジ、レイ、アスカは、シンジを除いた二人が泳いでいた。

「兄貴、泳がないの?」

プールを見て、セイジの手から離れようと暴れるペンペンを下に降ろして、パソコンと睨めっこしているシンジに声をかけた。

「うん。 アスカづてでミサトさんに言われちゃったからね。
 これくらいはやっとかないと…。」

「へぇ、…これは…熱膨張か。」

既に記憶の片隅に追いやられていたアメリカでの学生生活を思い返す。

「あ、そう言われれば聞いた覚えが…。」

「ま、誰しも得意不得意があるんだから、あんまり根詰めすぎんなよ?」

その当時、セイジは地理に弱かった。 ある意味実体験である。

「セイジはどうなの? 不得意なのってナニ?」

シンジの問いに答えるのには少し時間がかかった。

地理は既に克服済みだ。

他の教科も問題は無い。

「俺か?
 …あえて言うなら、生きるのが下手なんだろうな。」

「生きるのが?」

ふと気付けば自嘲気味な顔つきをしていた。

苦笑でシンジの疑問を流して、シンジに近づいて、腕を掴んでプールの方に視線を向けて言う。

「ほれ、気分転換も大事だよ。 泳ごうぜ?」

「え、うん。
 でも…。 泳げないんだよね。」

シンジの困ったような表情に、改めて育った環境の差を思い知る。


三人と一匹は、満足の行くまで泳いでいた。

ただし、セイジは基本的にアスカに付き合わされることになった。

レイは一人淡々と。

シンジはペンペンとプールサイドで遊んでいたようだ。


「これが使徒ですか?」

作戦本部では、某火山の火口で使徒が発見されたという。

リツコとマヤがその写真を見せてくれた。

巨大な胎児のようなものが写っている。

「そうよ。 まだ完成体になっていない、サナギのような状態ね。
 今回の作戦は、使徒の捕獲を最優先とします。
 できうる限り原形をとどめ、生きたまま回収すること。」

「できなかった時は?」

アスカが手を挙げ、質問を許可されてから尋ねた。

「即時殲滅。 いいわね。」

「はい。」

「作戦担当者は…」

「はいはーい! アタシが潜る!」

リツコの言葉を遮って、手を挙げながら元気に立候補するアスカ。

「それでは、アスカ。
 弐号機で担当して。」

「は〜い。 こんなの楽勝じゃん。」

「私は…?」

静かに聞くレイ。

「プロトタイプの零号機には特殊装備は規格外なのよ。
 今回はコッチでお留守番ね。」

「はい。」

「俺は? 参号機は規格内だろ?」

「セイジ君は火口で待機よ。
 今回は命綱とも言うべきケーブルの特殊品が2本しかないの。
 1本は弐号機に繋ぐとして、予備として1本は手元に置いておきたいの。
 いいかしら?」

「了解。」

セイジは敬礼をしてみせる。

実際に潜らないのだから気楽なものだ。

「あの、僕はどうすれば…」

「シンジ君は…。 ま、本部にていいわ。
 エヴァ2機でも及ばなかったら呼ぶわ。
 …もしもの時の為に、ね。」

リツコの言葉に少なからず気を引き締められた。

「…もしもの時、ですか。」

「ま、羽化するまでにはまだまだ時間があるはずだから、大丈夫よ。
 …A−17が発令された以上、すぐに出るわよ。  支度して。」

ミサとの言葉を受け、ネルフが動き始めた。


「耐熱仕様のプラグスーツって言っても、いつもと変わらないじゃないの。」

某山に建てた仮説基地のエヴァケイジでプラグスーツに着替えたセイジとアスカ。

アスカの方は耐熱仕様らしいのだが、いつもの物と変わりがないようにセイジにも見える。

「右のスイッチを押してみて。」

書類に目を通しながら言うリツコ。

アスカは言われた通りにスイッチを押すと、ダルマのよう丸くなってしまった。

「イヤアアァァ!な、なによ!これえぇぇ!?」

それを見てセイジは笑いを堪えつつ「おぉ、ぷっくり。」とつぶやいた。

「セイジ! 煩いわよ!」

「弐号機の支度もできてるわ。」

かなり笑える姿のアスカを見ても冷静なままのリツコ。

それとも書類に目をやる事で見ないようにしているのか…。

どちらにしても確信犯だろうとセイジは思う。

「なによ! これえぇぇぇ!!」

アスカの叫び声が響く。

白い潜水服のようなものを着ている弐号機。

「耐熱耐圧耐核防護服。 局地専用のD型装備よ。」

「これがアタシの弐号機…?
 嫌よ、わたし降りる!!
 こんなのはシンジと初号機がお似合いよ!!」

この発言は問題だ。

せっかく(まぁ、他にも人はいるが、少なくとも家の中には)二人きりになったのに、引き離すのは今後が面白くない。

(ここは一つ、リツコさんの助力を借りて…)

「あらら、それは残念だ。
 向こうに行けば温泉に入れるかもしれないのに…」

「温泉? …そういえば行ったことないわねぇ…。」

思惑通り、温泉に反応してくれた。

「勿論NERV貸切。
 ね? リツコさん。」

「…そうね、それもいいかも知れないわね。」

リツコにしては珍しく堅苦しい事を言わなかった。

「宴会でもやります? 技術部の人連れてきて。」

「…そんな余裕はないわよ。
 彼等は…」

「根詰め過ぎると逆に効率が悪くなりますって。
 気分転換にやりましょうよ?」

確かにそうとも思えるが、本音は自分の楽しみのためである。

「…アナタ、まだお酒はダメよ?」

「あ、痛いトコ突かれたなぁ…」

そう、それも楽しみの一つだが、どうやら先手を打たれたようだ。

さすがは赤木リツコ博士。

リツコと漫才気味なやりとりの横で、アスカはやる気になっているようだ。

(ま、ひとまず成功か?)


どうにかアスカが弐号機に乗り込み、出撃のスタンバイを完了させて屋外に出ると、国連軍の戦闘機が数機飛んでいた。

「国連軍か…。
 ミサトさん、あれって失敗した時用の足止め機ですか?」

『そうよ。失敗したら、NN爆雷の餌食になるわ。
 ここにいる皆がね。』

『なによそれ!? 酷いじゃない。』

『私達にプレッシャーかけてるつもりなのよ。』

「…ウザッタイから叩き落していいですか?」

『うぅ〜ん。 魅力的な提案だけど、後々困るから止めて頂戴。
 とにかく、一発で捕獲すれば万事解決よ。』

『ミサト、私に任せなさい。 絶対捕まえてやるんだから。』

「アスカは温泉の為に。
 俺は宴会の為に…」

この言葉は聞かれていなかったようだ……


セイジは火口で、ただ通信を聞いている。

プログナイフを紛失したらしい事と、使徒を捕獲した事だけはハッキリと聞いていた。

そして、リツコのこの言葉も。

『まずいわ! 孵化を始めたのよ! 計算より速すぎるわ!』

『キャッチャーは?』

『とても持ちません!』

『捕獲中止! キャッチャーを破棄!』

素早いミサトの判断アスカは命令をすぐに実行したようだ。

以後は使徒の殲滅に移行するが、弐号機はナイフを紛失している。

「アスカ、コッチのナイフを落とす。
 マヤさん、コースの推定よろしく!」

『了解、チョット待っててね。……』

ナイフを落とす時に、溶岩内の対流を考える必要があるが、セイジはそんな計算などできないのでマヤに一任する。

『作戦変更。 使徒殲滅を最優先。
 弐号機は撤収作業をしつつ、戦闘準備!』

『……出たわ! 送るわよ。』

「ども。 アスカ、ナイフ落とすぞ!」

マヤの計算したコースをたどり、溶岩に入るプログナイフ。

『早くしなさいよ!』

暫くの間を空けて、ナイフが弐号機に届いたようだ。

『この高温、高圧の環境で口を開けている?
 どういう構造をしているの!?』

リツコの驚愕を含んだ声音を聞きながらセイジは思考する。

(って事はナイフじゃ無理だ!
 …ん? 高温?
 …ケーブルには冷却用のパイプが通っていたよな?)

「アスカ! 熱膨張を使え!
 腰周りのパイプ!!」

『もっと早く言いなさいよ!!』

言われて、悪態をつきつつも行動はしたようだ。

次のマヤさんのセリフでわかる。

『弐号機、3番パイプを引き千切りました。
 …使徒との…、距離ゼロです!!』

『たあぁぁぁ!!』

マヤの報告とほぼ同時にアスカの気合の篭った一撃が使徒に冷気を伴って襲い掛かっている事だろう。

『全冷却液を3番パイプにまわして!』

『…使徒、殲滅を確認。
 …ケーブルの4分の3が破損しました!!』

(不味いだろ!!)

機体を数歩後ろに下がらせてから一気にジャンプし、空中でケーブルを掴みつつ火口の対岸ギリギリにしがみつき着地、弐号機が自力で崖に掴まれるようにケーブルの引き揚げ位置をずらす。

『全ケーブル、信号途絶!!』

その言葉と、溶岩の煮えたぎる岸壁に、弐号機の腕が現れるのはどちらが先だっただろう。

「リツコさん、ケーブルだして!
 弐号機を上げます!!」

『耐熱装備なしよ!?』

「早く!
 あのアームじゃ登れない!
 電源切れないうちに早く!!」

返事は言葉でなく、たるんでいくケーブルがしてくれた。

腰部分にケーブルを回し、結んでから、ロッククライミングの要領で岩場を降り弐号機の腕を掴み、ケーブルに引き揚げるられるのに身を任せる。

「はぁ、これで皆で宴会できるってもんだ…。」

『ナニよ。 宴会の為に助けられたの!?』

「いんや。
 本音と建前ってヤツは同一ではない事の方が多いもんさ。」

本音を気付かれやしないかと思ったが、そこまで聞き取る事はできなかったようだ。

『ハァ? 何いってんの?』

「いや、アスカが生きてて良かったって事さ。」

口調が加持に似ていると自覚して、苦笑する。


温泉の仕切り越しのミサトとの会話が続いている。

「…え? じゃぁ宴会は?」

「セイジ君。
 残念だけど、宴会場の貸し出しってやってないのよ、ここ。
 しょうがないけど、温泉だけね。

 ちなみにそっちはお酒出届けないようにってフロントの人に言っといたから出ないわよん♪」

露天風呂の男湯と女湯の仕切り越しにミサトと話すうちに、セイジは宴会はやらないと告げられる。

「くそ! 最近唯一楽しめるモノが…」

「煩いわね。
 大体、まだ未成年でしょ? 飲めないのが普通なの。」

ミサトの反論に負けじと反論する。

「何を!? 国会議員が法を犯すくらい普通じゃないですか!
 何で俺はダメなんですか!!」

「普通じゃないわよ、そんなモン。
 あ、シャンプー投げてくんない?」

ミサトの言葉に唇の端を上げてニヤリと笑う。

「ビール一杯で手を打ちましょう。」

「ダメ。  ちなみにシャンプーないとアスカが困るわよ?」

「じゃ、酎ハイ一缶。」

「…いいわ、帰りにね。」

近くにあったシャンプーを隣に投げる。

狙いは、さっきからセイジを酒から遠ざける発言をしている個所に向けて…

「痛っ!
 チョット、今狙ったでしょ!」

「偶然ですよミサトさん。
 ちなみに報酬とはまったく関係ありませんから、無しとか言ったらダメですよ?
 ミサトさんは大人だからそんな事しないと思いますけどね〜。
 な、ペンペン。」

加持がナマ物扱いで送ってきたペンペンと、復讐成功を喜び合っていた……。


――あとがき――

【幻魔狼】 あれ、セイジってこんなんだっけ?

【セイジ】 …キャラ、違わないか?

【レイ】 問題ないわ

【シンジ】 でも、宴会好きって設定はなかったよね?

【幻魔狼】 特別、酒が好きだって設定もないぞ

【セイジ】 なら、なんでこうなる!?

【レイ】 作者が作者だもの、仕方ないわ

【幻魔狼】 おぉ! 俺のせいか!

【セイジ】 いや、それ以外に何が原因になるんだよ

【幻魔狼】 俺のテンション

【シンジ】 それって、十分作者が原因だよね

【幻魔狼】 …気付いた?

【セイジ】 気付かないはずがない

【幻魔狼】 そうか、そうだよなぁ…

【レイ】 そういえば、赤毛猿がいないわ

【シンジ】 綾波、惣流って名前で呼ぼうよ

【幻魔狼】 あれまぁ、セイジ君は気が付かなかったか…

【セイジ】 いや、気が付いてはいたが…

【アスカ】 ……………←呆けている

【セイジ】 アレをどうしろと?

【幻魔狼】 だって、セイジがアスカを助けた後に何のフォローもしないから拗ねてるんじゃないか

【レイ】 自分のモノは自分でやって

【セイジ】 いや、俺のモノって訳じゃないんだが…

【幻魔狼】 ノンノン。 作者公認だから、やっちゃってください

【シンジ】 え、やるって何を?

【幻魔狼】 そりゃぁ、初心なシンジ×レイ組には出来ないようなアレですよ、アレ

【レイ】 取り敢えず、お持ち帰り(ボソ)

【セイジ】 …やるの?

【幻魔狼】 うん。 次回のあとがきには復活させといてね?

【レイ】 出てこなくてもいいわ。 赤毛猿がいなくても影響ないもの

【シンジ】 うわぁ、綾波ぃ!?

【幻魔狼】 …取り敢えず、また次話で〜



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